【菅井友香】"馬との絆" 乗馬、怪我、そして競馬番組MCとしての今
タレント・芸人

「好き」の気持ちを深く掘り下げ、新たな「好き」と出会うきっかけを届けるHOMINISの本企画。
今回登場してもらったのは現在は競馬番組『競馬BEAT』のMCとしても活躍する元櫻坂46の菅井友香。
物心つく頃から動物を愛し、初めてのポニー体験を機に"馬"という存在に心を奪われた菅井。小学生で乗馬を始め、やがて馬場馬術の競技にも挑戦。怪我や挫折を経ながらも、大学進学後も馬との時間を大切にし続けてきた。かつては背中を追い、信頼を築いてきた馬たちとの記憶を胸に、いまはメディアという新たなフィールドで"馬の魅力"を届けている。
HOMINISでは、そんな彼女のこれまでの歩みと、今も変わらぬ"馬への愛"についてじっくりと話を聞いた。競技者から伝え手へとフィールドを広げた菅井の"好き"と真摯に向き合う思いに迫る。

――菅井さんは子どもの頃から馬に親しまれていたと思いますが、そもそも馬との出会いはいつだったのでしょうか?
「物心がついた頃から、とにかく動物が大好きだったんです。家には猫が2匹いて、赤ちゃんの頃からその子たちと一緒に過ごしてきました。よちよち歩きの頃にはもう、猫の後を追いかけていたみたいで。家族で動物園に行くことも多くて、そこで初めて馬と出会ったんです。ポニーに乗る体験があって、そのときに感じた背中の揺れや、毛並みの温かさがすごく印象的で、自分の中に何かときめきのようなものが芽生えたのを覚えています。その後も動物とのふれあいは続いていて、小学生のときには近所の動物ふれあい施設に通ったり、図書館で動物に関する本を借りて読んだりしていました。特に馬は、図鑑で見るだけでも惹かれる存在で、『この大きな動物と心を通わせるって、どんな感じなんだろう?』と思っていたんです」
――「乗馬をやってみよう」と思ったきっかけは何だったんでしょうか?
「小学5年生のとき、仲の良いお友達が『今度から乗馬を習うんだよ』と教えてくれたんです。そのお友達のお母さんが私の母に『よかったら一緒にどうですか?』と声をかけてくださって。それが本当にありがたくて、そこから一気に現実味が帯びてきた感じがしました。でも実は、当時フィギュアスケートも再開しようかなと考えていたんです。そんなときに『どっちか選んで』と母に言われて、しばらく悩んだんですけど、最終的には『今までやったことがないことをやってみたい!』という好奇心が勝って、乗馬を選びました」

――最初に行った乗馬クラブはどんなところだったんですか?
「東京にある乗馬クラブで、少年団というジュニア向けの育成プログラムがありました。そこに入るためには、なんと面接が必要だったんです。小学5年生で面接って聞くとちょっと構えてしまうんですけど、そのときは『馬に会いたい!』という気持ちの方が強くて、緊張しつつも思いをしっかり伝えることができたと思います。ありがたいことに、無事合格をいただいて、そこから本格的な乗馬生活がスタートしました」
――乗馬初日のことは覚えていますか?
「はい、忘れられないです。想像していたよりずっと大きな馬が目の前にいて、思わず声が出ちゃったんですよね。馬って、写真や映像で見るよりもずっと存在感があって、迫力があるんです。でも不思議と、怖さよりも安心感の方が大きくて。『この子、優しそう』って思ったのを覚えています。先生の手を借りて、いざ背中に乗ってみたときに、目線がぐっと高くなって世界が変わったような気がしました。そこから、馬との生活がどんどん自分の中に入ってきて、レッスンが待ち遠しくてたまらなくなりました」

――レッスンではどんなことを学ばれたんですか?
「まずは基本的な手入れや接し方を学びました。馬房に入る前の挨拶の仕方や、ブラッシングの順番、足の裏を洗うときのコツなど、覚えることがたくさんあって。でもどれも、馬と仲良くなるために必要なことなんだと思うと、全てが楽しかったです。ただ、すぐに壁にぶつかりました。初めての駆け足のレッスンで、スピードに乗った瞬間、恐怖心が出てしまって、体が硬直してしまったんです。そこから少しずつ怖いという感情が芽生えてしまって...」
――その頃、大きな怪我も経験されたんですよね
「そうなんです。小学6年生の時、個人レッスン中に馬が急に跳ねてしまって。私は反応が遅れてしまって、空中でくるんと回って、そのまま右肩から落下してしまいました。右肩を骨折してしまって、その瞬間は本当に痛かったし、『もう乗れないかもしれない』と思うくらい怖かったです。ちょうど卒業アルバムの時期だったんですが、腕が上がらなくて、制服も着られず、合成で写真に入れてもらいました(笑)。当時はすごくショックでしたけど、今では笑える思い出ですね」

――その恐怖心をどうやって乗り越えたんですか?
「一人では絶対に無理だったと思います。母が本当に支えてくれて、『また楽しく乗れるようになってほしい』って、いろんな乗馬クラブを一緒に回ってくれて。先生にも相談して、少しずつ怖くないという感覚を取り戻せるよう、いろんな方法を試しました。その中で出会ったのが馬場馬術だったんです。初めてその演技を見たときに、『こんなに美しい世界があるんだ』と衝撃を受けて。走るスピードよりも、馬との精密なコンビネーションや、優雅な動きが求められる競技。これなら自分のペースで、馬と丁寧に向き合えるかもしれないと思って、すぐに惹かれました」
――馬場馬術に取り組み始めてから、競技にも出場されていたそうですね。
「はい。最初はただ『もう一度、馬と向き合いたい』という気持ちだけだったんですけど、練習を重ねていくうちに、少しずつ先生から『大会に出てみない?』と声をかけてもらうようになって。初めて大会に出たときは、緊張でガチガチでした(笑)。いつも通りに馬にまたがっているはずなのに、会場の空気や観客の視線を感じてしまって...。でも、演技を始めてすぐに今はこの子と2人だけの時間なんだと気持ちを切り替えられたんです。馬の温かさや、リズムに呼吸を合わせていく感覚。あの瞬間は本当に特別でした」
――大会を重ねていく中で、成長を実感することもありましたか?
「ありました。毎回の大会ごとに、小さな課題が見えてきて、『次はここを直したい』『もう少し落ち着いて指示が出せるようになろう』って自分の中で目標が生まれてくるんです。それをひとつずつ乗り越えていくことで、自信もついてきましたし、何より馬と自分の信頼関係が深まっていくのが分かるようになってきたんです」

――大学に進学されてからも、馬術は続けていたんですよね?
「大学に入ってからも、1年生のうちはしっかりと競技に取り組んでいました。もちろん学業との両立は大変でしたけれど、授業の合間や休日を使って乗馬クラブに通っていました。授業が終わると急いで着替えて、クラブに向かって、馬房の前で『今日もよろしくね』って声をかけてから練習を始める。それが当たり前の日常でした」
――グループでの芸能活動と並行していた時期もあったと思います
「そうなんです。大学2年生からは、アイドルグループの活動も本格的に始まって、だんだん競技の大会に出るのが難しくなっていって。でも、完全にやめることはできなかったんです。それくらい馬との時間が大切で。だから、少しでも時間があれば馬に会いに行って、ブラッシングをしたり、馬房の掃除を手伝ったりしていました。あの頃は本当に忙しくて、朝から夜までスケジュールが詰まっている中で、それでも馬に触れると不思議と心が落ち着いて、『あ、私ここに帰ってきたんだな』って感じられたんです。馬って、そういう癒しの力を持っているんですよね」
放送情報
「競馬BEAT」
関西テレビほかにて毎週日曜午後3:00放送
詳しくは
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