江戸で浪人として長屋暮らしを始めた磐音は、長屋の大家・金兵衛(中村)の紹介で昼間はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働いていた。そんな中、金兵衛の娘・おこん(木村)とも親しくなっていく磐音だったが...。幕府が流通させた新貨幣をめぐる騒動が起き、磐音は巻き込まれていくのだった。

磐音には心に秘めた人がいる、それを知りながらも支え続けるおこんをけなげに演じた木村。時折見せる切なさはありながらも、はつらつと当時の江戸の勢いを感じさせるパワフルな女性像を作り上げている。そんな彼女の思いを知ってか知らずか、磐音は口数こそ少ないものの、おこんと話をしている際には笑顔を見せる。そのキュートな笑顔が磐音の人柄の良さを表し、松坂の愛らしさとリンク。暗い過去を背負いながらも根底のやさしさはぶれない、そんな魅力的な人間像を作り上げている。

そして見事だったのは、柄本佑との殺陣シーン。返り血を浴びた鬼気迫る琴平を止めようと、刀を振り上げる磐音...なんとも悲しい闘いだった。

江戸の人々の人間ドラマをしっかり描きながら、松坂が見せる本格的な殺陣なども楽しめる時代劇。一粒で二度おいしい、満足度の高い映画である。

文＝石塚ともか