けんかはめっぽう強いが、周囲に嘘をつき続けていることで葛藤し続けている主人公の剛。けんかの仕方を息子たちに叩き込んだトラック運転手の父・勝(宇梶剛士)と、千葉県最強のレディース総長だった母・ナオミ(鈴木紗理奈)。そんな両親に育てられ、兄は高校在学中に関東制覇したカリスマヤンキー・猛(満島真之介)、妹は改造自転車を乗り回すヤンキー女子中学生・吟子(原菜乃華)。と、筋金入りのヤンキー一家だ。夕飯は家族揃って食べるのがルールで、剛は猛の関東制覇を超える"全国制覇"を成し遂げることを家族から期待されている。家族の真っすぐな"ヤンキー魂"が自分に向けられた愛だと分かっているからこそ、剛は「青春がしたい」とは言い出せず、期せずして2つの顔を使い分けることになってしまう。

しかし、心優しい剛はクラスメートを守るため、封印するはずだった特攻服に着替えて市松高校のヤンキーたちを一網打尽にしてしまう。その様子を見ていたのが、誰ともつるまないクールな市松高生・直樹。"今時ダサい特攻服を着ているのは難破兄弟ぐらいだ"と言われた剛は、直樹にだけは本当のことを話し、2人の間には友情が芽生えていく。お坊ちゃま育ちだが、両親が離婚して家庭の愛には恵まれていない直樹は、剛とは育った環境こそ対照的だが、互いにけんかが強く、男気のある性格。後に、陽気でノリが良く、腕っぷし最強の大丸大助(森本慎太郎)が剛の恋のライバルとして登場。そこでも、身体を張って互いを守ろうとする剛と直樹の友情が熱すぎる。

■間宮祥太朗と神尾楓珠のギャップが最高な演技にときめく！

コミカルからシリアスまで幅広くこなす間宮だが、本作ではその資質が全開になっている。同級生の藤田深雪(森川葵)に一目惚れして同じ美術部に入った剛は、絵を描いている時は文化系の優等生にしか見えない。しかし、ヤンキーデビューしたばかりの島崎登(春本ヒロ)が深雪と親しそうに話している時には、ジェラシーのあまり思わず凄んでしまうなど、その芝居の細かさは見るほどに新しい発見がある。家族にも好きな人にも本当の自分を見せられずに1人で苦悩する姿と、大事な人や場所を守るために戦う姿のギャップは、新しいタイプのヤンキーヒーローだ。

そして、剛の優しさを汲み取る直樹を演じた神尾も、シニカルな視線と心を許した相手にだけ見せる笑顔のギャップで魅了。進路に悩む剛に「お前の人生なんだから好きにやればいいんだよ」と言うセリフからも、愛が溢れ出ている。

剛と直樹を演じた間宮と神尾の男前な演技と共に、ストレスも吹き飛ぶ痛快なストーリーを楽しんでほしい。

文＝山本弘子