本格女優路線アイドルの先駆者!南野陽子がその演技を絶賛された映画「スケバン刑事」

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■敵組織の首領を演じた伊武雅刀の不気味さも秀逸

スケバン刑事(映画版)/(C)和田慎二・東映

強大な悪の組織である地獄城相手の戦闘シーンも迫力満点。後半では南野演じる2代目サキが4倍の重量、16倍の破壊力を持つ「究極のヨーヨー(新超密度合金製ヨーヨー)」を使用する。だが、この武器は使用者の負担も大きい諸刃の剣。自らも傷つきながら強大な敵と戦うシーンが最大の見せ場だ。敵の首領である服部を演じる伊武雅刀の不気味さ、全国から集めた不良生徒を洗脳し、兵士として操るなど恐怖感もある。主要人物の一人が序盤で命を落としたり、敵に捕まった2代目サキが拷問を受けたりするなど、ハードな展開も多く、爆破シーンなど派手な演出も多用されて見どころは多い。

余談だが、原作者の和田も冒頭の場面にカメオ出演している。南野陽子は、本作で第42回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞するなど、その演技を高く評価された。じつは運動が苦手だったため、本作のアクション場面で苦労したことを後に語っていたが、特訓の甲斐もあって奮闘している。スピード感には欠けるものの、表情の演技が巧みで、心情の表現も丁寧で好感が持てる。兵庫県出身で、土佐弁に関西訛りが入ってしまうので、うまくできなかったと語っていたが、それがまた味わい深い。ちなみに自身が歌う本作の主題歌「楽園のDoor」も大ヒットし、オリコンチャート1位を記録している。

監督はドラマシリーズのメイン演出も務めた田中秀夫が務めた。「宇宙刑事シリーズ」など、特撮作品で活躍しただけに、本作の絵作りにも特撮で培ったダイナミックなカメラワークが駆使されている。妥協をしない厳しい仕事ぶりで知られるが、南野に関しては「どんなに厳しく叱っても、彼女は決して泣かなかった」と、その根性を褒めている。

アイドルの主演映画は当時も多かったが、南野は本格女優路線アイドルの先駆者的な存在とされ、演技に真摯に取り組んだことで知られる。本作でブレイクした以降も「はいからさんが通る」(1987年公開)にも主演。卒業式や成人式に大正ロマン風に袴を履くスタイルを定着させたのは、本作の南野の衣装がルーツとも言われるほど影響力を発揮した。

1992年には、自ら企画した映画「私を抱いてそしてキスして」に主演。エイズ問題を正面から描いた硬派な作品に体当たりで挑み、第16回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。この頃から女優業に専念し、演技力にいっそう磨きをかけていく。80年代後半のカリスマアイドルとして君臨した南野陽子だが、「スケバン刑事」が彼女の人気を不動のものにしたことは言うまでもない。映画「スケバン刑事」は、南野を中心に良き時代のエンタメの空気に満ち溢れた良作である。女優として花開く南野の萌芽をぜひ感じてほしい。

文=渡辺敏樹

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放送情報【スカパー!】

「スケバン刑事」(映画版)
放送日時:2025年8月1日(金)18:00~
放送チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります。

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