フリーター3人組を演じる佐藤、岡田、塚本は、本作の他にも「木更津キャッツアイ」シリーズなど共演も多く、親交の深い旧知の間柄だ。そんな彼らが、あまりにも普通で日常そのままの雰囲気を醸し出す。くだらない言動はおふざけ満載ながら、本人たちは至って真剣に楽しんでいる。

やらされている感も無理している感もない日常の延長線上のような自然さで、おバカなフリーター3人組になりきる。プライベートの様子を公開しているのかと錯覚するほどにリアルで、ゆるい間や他愛もない会話、自由な姿につい頬がゆるんでしまう。まさに深夜のファミレスらしい、ぬるま湯のような絶妙なゆるさとグダグダ感が心地いい。

そんないつものTHE3名様だが、本作はこれまで以上にパワーアップした新作映画。"超イケてるゲスト"として、櫻井翔がまさかの出演を果たしている。学生時代から原作を読んでいた筋金入りのファンである櫻井は、実写化した当初から出演を熱望していたと言う。そして、彼も前述の「木更津キャッツアイ」メンバーの一人で、佐藤らとは気心の知れた仲。覆面男の妻・ヒバリ役の平岩紙も含め、これ以上ない最高のキャスティングと言えるだろう。

念願叶っての参加に、作品への熱いリスペクトを持って臨んでいる。櫻井が演じるのは、深夜のファミレスに現れた謎の覆面男。脱力しきった彼らといつものファミレスに、シリーズ史上最大のとんでもない事件を起こす。マスクの隙間からステーキを頬張る姿も、3人組と交わす軽妙なやりとりも、妻に弱いところもはた迷惑だが憎めない。櫻井もまた至って真剣に、生き生きと謎の覆面男を熱演した。

ショートコンテンツの"元祖"は、20年近くに渡って愛され続けるご長寿シリーズへと成長した。佐藤、岡田、塚本のトリオ感は変わらず、長い付き合いがあってこその優れたチームワークが、絶妙なゆるい世界観を実写化でも成立させている。彼らの関係性が最大限に生かされた「THE3名様」の空気感を、肩の力を抜いてゆったりと楽しんでほしい。

文＝中川菜都美