吉岡秀隆と当時11歳の須賀健太の共演で生み出した名シーンは号泣必死!昭和を舞台に描く名作「ALWAYS 三丁目の夕日」
俳優

(C)西岸良平/小学館 (C) 2005「ALWAYS 三丁目の夕日」製作委員会
吉岡が演じる竜之介はボサボサの無造作ヘアに大きな眼鏡と、多くの人がイメージするような昭和の文学青年のスタイルで登場。タバコを何本も吸いながら万年筆で原稿を一心不乱に書きつづったり、伯母から引き続いだ駄菓子屋の客でもある子供たちにからかわれて怒ったりと、喜怒哀楽がはっきりしている竜之介。そんな彼を吉岡はメリハリのある演技と、ちょっと上ずった甲高い声でのセリフ回しで、いきいきと表現した。
そして、竜之介が町1番の美女・ヒロミに押し付けられる形で面倒をみることになるのが、当時11歳の須賀が演じた淳之介だ。淳之介は、父の顔を知らず、さらには母に捨てられてしまった不憫な男子小学生。ランドセルを背負い、風呂敷包みを手に竜之介の家へやってきたものの、竜之介から「お前と俺とは縁もゆかりもない赤の他人なんだよ!」と冷たく突き放される。最初はうつむきながら竜之介の顔色を伺っていた淳之介だったが、竜之介が大好きな冒険小説「少年冒険団」の作者だと知り、以前からのファンだったことをアピールする。そのシーンで須賀が見せる驚きと喜び、憧れの作家が目の前にいることへの戸惑い...と、さまざまな感情がない交ぜとなった表情は、まだ11歳の少年が演技で作り上げたとは思えないほどに複雑かつリアル。この頃からすでに須賀が役者として圧倒的な実力があったことがよくわかるはずだ。
特に秀逸なのは、淳之介が書いていた小説を読んだ竜之介が、その小説を自分のものとして雑誌に掲載するという事件を描く場面。淳之介のノートからアイデアを盗んだ竜之介から、「原稿料が入ったらお前に半分やる」と言われても、頑なに首を横に振る淳之介は、「僕、嬉しいんです。僕が考えたお話をおじちゃんが小説にしてくれて、それが本になるなんて。すごいです」と感動を口にする。その笑顔を竜之介が切なくも愛おしそうに見つめるカットでの吉岡の自然かつ繊細な演技、そして須賀の純粋な笑顔が、見る者の胸を大きく震わせる名場面だと言える。
そして、吉岡と須賀という実力派同士の演技力がぶつかり合うのが、彼らが淳之介の家族が誰なのか気付くシーン。淳之介の幸せのために身を引こうとする竜之介と、竜之介と共に生きたいと願い、竜之介に突き放されても首を横に振りながらしがみつく淳之介の姿を描く場面では、2人の演技力が炸裂。表情が全く見えない状況でも、涙で震える声と、愛おしそうに淳之介の頭を撫でる手で、淳之介への深い愛情を表現した吉岡。同時に、淳之介が抱く竜之介への信頼と愛情をセリフなしで演じきった須賀が作り上げた感動のシーンは、まさに号泣必至だ。
ノスタルジックな昭和の街並みを背景に強い絆で結ばれた人々の姿を描く、心温まる群像劇。本作のヒットを受け、続編も制作される中で、竜之介と淳之介の関係も深化していく。そんな彼らの原点を描いた本作を、吉岡と須賀の演技に注目しながら味わってほしい。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
ALWAYS 三丁目の夕日
放送日時:2025年9月14日(日)14:40~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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