(C)2024 Nekojarashi/BittersEnd/Hitsukisha
建物の床に倒れている隼人のことを、返り血を浴びた沙苗がタバコを吸いながら見下ろす。そんな衝撃的な描写から始まる本作での橋本は、常にどこかに"空虚"を伴った演技を見せている。平穏な新婚生活を送り出したかのように見えて、結婚してもなお健太を"小泉さん"と呼ぶ沙苗は、壁を作っているようにも見える。そんな中、現れた足立の存在が沙苗の心に波紋を呼び、沙苗は再び暗く不穏な空気を纏うように。印象的なのは、定期的に通っているカウンセリングで、沙苗の本音を浮き彫りにするかのような言葉たち。自分自身を"臨時的に生きている感覚"と表現したり、"全てを捧げるからこそ愛は永久不滅で、そのほかは愛に近いものなだけ"と言ったり。健太のことを"好き"とは思うが、それは沙苗にとって"本物の愛"とはまったく違うもの。過去の自分に思いを馳せるがあまり、現在の自分は本当の自分ではないという様子で、何をしでかすかわからないような危うさを持つ沙苗。そんな彼女を体現した橋本の淡々とした演技が見事だ。
太賀が演じる夫・健太はそんな沙苗とは対照的な存在に映る。良い意味で"どこにでもいそうな普通の男"を演じる自然な佇まいは、まさに仲野の持ち味。見合いの席や、沙苗の過去を打ち明けられた時にも飄々とした様子で、沙苗のことを「死んだ目」「殺そうとしたけど、逆に殺されたんだな!」なんてカラッと言い放つ。沈んだ空気の沙苗を浮き上がらせるかのような、バランスのとれた存在だ。そんな健太も、沙苗との生活の歯車が狂い始める中で激情を見せることも。そんな時も仲野の演技はさすがのもので、健太の中で沸々と湧き上がり、ついには爆発するさまをナチュラルに表現している。
「愛とは何か」「過去を受け入れてどのように生きるか」、そんな重いテーマを投げかける本作。橋本と仲野の演技に注目しながら、その問いかけの答えを見つけ出してほしい作品だ。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
熱のあとに
放送日時:2025年11月19日(水)23:50~
チャンネル:WOWOWライブ
放送日時:2025年11月25日(火)5:15~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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