(C)1975 松竹株式会社
「絶唱スタイル」とか「熱唱系」とも称された独特な歌唱法は、誰にも真似できない魂が籠っていた。当時20歳という若さで、独自のボーカルスタイルを確立していたことも脅威と言える。ちなみに、大規模野外コンサートの先陣を切っただけでなく、西城秀樹は本作の前年1974年にも大阪球場でコンサートを行っているが、これが日本人歌手として、初のスタジアムでのワンマンコンサートでもあった。
以降、大阪球場では10年連続でコンサートを実施。東京の後楽園球場でも4年連続でコンサートを行った。さらに、本作公開の直後、1975年11月には、日本武道館でもコンサートを開催したが、これも日本人ソロ歌手としては初めてのことだった。今では当たり前になった野外フェスやスタジアムコンサート、武道館ライブは、すべて西城秀樹が道を拓いたのである。彼はスターであり、パイオニアでもあったのだ。
■コンサートだけでなく母校を訪問する秀樹の姿も
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札幌五輪の舞台となった大倉山ジャンプ競技場、大通公園や札幌市時計台、出身地の広島市では原爆ドームや母校である二葉中学校を訪問。「よく朝寝坊しては校門で叱られた」逸話なども語ってくれる。単純なコンサートの記録映像には終わらせないというスタッフの熱意も感じられ、宮島の大鳥居や広島郵便貯金会館、福岡市民会館、宮崎市民会館、名古屋城、夏祭りの金魚すくい等、各地のこの年の夏の風景なども克明に映し出す。
ドキュメンタリー映画「ブロウアップ ヒデキ」は、西城秀樹の類まれな歌唱力とパフォーマンスの記録であるばかりでなく、人間味あふれる等身大の青年の本音も垣間見られる。彼の「表と裏」の顔を見せてくれることに加えて、日本を代表するアーティストである西城秀樹を主役とした日本の音楽史に輝く音楽ドキュメンタリーとして、胸を張って紹介したい一本だ。
最後に、映像で女性ファンが語った印象的なコメントを記しておこう。「太宰治が『富士には月見草がよく似合う』と言ったけど、西城秀樹には太陽が似合っている」。まさにその通り。彼は歌で日本中を照らす太陽のような人だった。鬼籍に入ってしまったのは悲しいが、こうして映像で彼の歌をいつまでも味わうことができるのはとても嬉しい。
文=渡辺敏樹
放送情報
ブロウアップ ヒデキ
放送日時:2025年12月17日(水)18:45~
放送チャンネル:衛星劇場(スカパー!)
出演:西城秀樹
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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