慈愛に満ちた眼差しと恐怖に顔を歪ませた叫び...長澤まさみが演技の幅を見せる!矢口史靖監督の多彩な演出も見逃せない映画「ドールハウス」

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「ドールハウス」
「ドールハウス」

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長澤は事故で愛娘を失った佳恵を演じた。洗濯機を覗く表情と叫びで、恐ろしい何かが起きたことを想像させる。自責の念に苛まれて悲しみのどん底にいる姿は、悲壮感と絶望に満ちている。人形を我が子のように愛でる様は異様で、妙に生き生きとした笑顔に狂気を感じさせる。優しい歌声も不気味に聞こえてくるほどだ。何度捨てても返ってくるアヤちゃんに怯え、佳恵は精神的に追い詰められていく。

しかし、最後に覚悟を決めた勇ましい顔には、娘を愛する母の強さが滲んでいた。娘たちに向ける慈愛に満ちた眼差しと、美しい顔を恐怖に歪ませた叫びの表情。そのギャップに違和感のない長澤の演技の幅も見事だ。真に迫った熱演に、見ているこちらの心拍数も上がってしまう。

また、佳恵の夫・忠彦役を演じた瀬戸康史のリアルな反応も、物語に深みを与えている。日常と非日常を行き来しながら、佳恵に寄り添ううちに洗脳されるように人形に慣れ親しみ、次第に恐怖が伝染していく様をありありと映し出す。瀬戸のほか、田中哲司、安田顕、風吹ジュンらベテラン陣が脇を固め、物語は謎や伏線を張り巡らせながら息つく間もなく展開していく。

矢口監督は、伸びる髪の毛など古典的なものだけでなく、見守りカメラや動画配信なども使って現代に合わせた演出も盛り込んだ。風貌の似た娘と人形、ベッドに滑り込む音や通り過ぎる影、シーツや紙袋なども効果的に使った生々しい質感に、現実と虚構が入り混じり、じわじわと恐怖が忍び寄る。コメディ作品で魅了してきた多彩な演出が、本作でも随所に光っていた。

長澤をはじめとするキャストたちの熱演に引き込まれ、最後までノンストップで楽しめる本格ミステリーに仕上がっていた。

文=中川菜都美

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