広瀬すずが繊細に映し出す"心が溶けていく過程"が胸を打つ――當真あみの瑞々しい演技も光る「水は海に向かって流れる」

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(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社

広瀬は冒頭から、クールな表情で千紗を演じている。笑顔をほとんど見せず、感情の起伏もあまりない姿からは、千紗が過去の出来事に縛られて心を閉ざしていることがうかがえる。そんな千紗の心の傷や諦めを、広瀬は抑制の効いた演技で表現。そして、直達との関わりの中で硬く閉ざされた心が少しずつほどけ、前に進んでいく千紗の内面の揺れ動きもナチュラルに描き出している。

千紗と直達は年の差10歳。千紗が心を閉ざし、もうすでに諦めのついている"とある出来事"についても、直達からすれば青天の霹靂(へきれき)のような事実。千紗に「直達くんはもう気にしないで。直達くんがいい子にしていれば余計な波風は立たない」と言われても「いい子じゃなくていいから、半分持ちたいです」と、真っ向からその出来事を受け止めようとする。そんな直達の青さゆえの真っすぐさが、傷を受けて16歳のまま止まっていた千紗の心を、少しずつ溶かし、動かしていくのだ。

思えば千紗は、冒頭から不愛想ではあるが、決して冷たい人間ではない。どしゃぶりの雨の中、駅まで直達を迎えに行き、初対面の直達に手料理の"ポトラッチ丼"を作ってあげる。自分と直達との因縁について、シェアハウスの住人・賢三に打ち明けた時には、賢三から「変ないじわるして追い出せば?」と助言されるが、もちろんそんなことはしない。「あの子はいい子だよ、大体、子供には関係ないじゃない」と、直達を責めたり否定したりすることはない。そんな千紗のクールさの中にある優しさを広瀬は絶妙な塩梅(あんばい)で表現しており、不愛想なだけではない魅力的な女性として描かれている。

■淡い恋心を抱く女子高生・楓をフレッシュに演じた當真あみ

(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社

直達の同級生・楓を演じた當真は、本作で長編実写映画に初出演を果たした。だからこそのフレッシュな演技が作品の中で生きており、等身大の女子高生を瑞々しく演じている。直達への淡い恋心をセリフだけではなく目の表情で表し、千紗をライバル視して動揺する楓の心情を丁寧に演じた當真の好演もさまざまなシーンで光る。特に千紗に気持ちをぶつけるシーンでの、真っすぐな演技には注目だ。

年の差10歳の2人が、シェアハウスでの出会いをきっかけに交流し、傷ついた心を少しずつ、少しずつ溶かしていく温かな物語。千紗と直達、楓、そして賑やかなシェアハウスの住人たちを見守るような気持ちで楽しんでいただきたい一作だ。

文=HOMINIS編集部

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