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同作品で、高倉は"渋さ"や"ストイック"とは違った一面を披露。腕っぷしが強く、終始強気で勝気、けんかっ早いという千吉を瑞々しく表現している。当時はデビュー2年目で27歳という若者であるため、演技のスタイルも、晩年のような周囲の人間や環境、その時の状況といった外的要因を受け止めた上で心の底からにじみ出てくるものを表現する受動的なタイプではなく、まず自らが動いて周囲を巻き込んでいくような能動的なタイプで刺激的だ。
観ると、白黒で昔の映画なのだが、高倉の演技の新鮮さを楽しむことができる上、周囲を巻き込みながら自分の存在感を濃くしていくスタイルを経て、"いぶし銀"なスタイルに進化していったことに気付かされて、彼が役者人生で積み上げてきたものの大きさに圧倒されてしまう。
一方で、後に迎える任侠作品での大ブレイクにつながる要素が散見されるところも醍醐味だ。腕っぷしが強く、誰に対してもひるまない気の強さ、それらの核ともいえる眼光の鋭さは顕在であるし、何より"重いものを背負って生きている"という人間的な深みを表す陰のある役柄の表現が絶妙で、"大ブレイク前夜"を感じることができる。
「名優は一日にしてならず」。今だからこそ新鮮な、晩年の"いぶし銀"の演技とはひと味違う若かりし頃のギラギラしたスタイルの演技を楽しみつつ、さまざまな経験と多くのトライ&エラーを繰り返しながら積み上げてきた彼の"役者道"の黎明期に触れることで、彼が築き上げてきた偉業の偉大さを感じてみてほしい。
文=原田健









