清原果耶の真価が光る映画「望み」――追い込まれた少女の不安と叫びを体現した圧巻の演技

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清原果耶が、揺れ動く少女の心情を繊細に演じている
清原果耶が、揺れ動く少女の心情を繊細に演じている

2014年にオーディションを経て芸能界に飛び込み、翌年には早くもNHK連続テレビ小説「あさが来た」で女優デビューを果たした清原果耶。その後も目覚ましい活躍を続け、映画「護られなかった者たちへ」(2021年公開)では第45回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を、映画「碁盤斬り」(2024年公開)でも第48回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受賞するなど、着実にキャリアを積み重ねている。

2025年11月にNetflixで配信されたドラマ「イクサガミ」では、激しいアクションをこなすなど新境地を開き、今後の活動からますます目が離せない。そんな清原の持ち味である、繊細な演技が味わえる作品としておすすめなのが、2020年公開の映画「望み」だ。

原作は雫井脩介のベストセラー小説で、少年犯罪に巻き込まれた家族の苦悩と葛藤を描いたサスペンス。一級建築士の石川一登(堤真一)は、家族とともに平和に暮らしていた。しかしある時、高校生の息子・規士(岡田健史)が外出したまま、連絡が取れなくなってしまう。家族が心配する中、規士の友人が殺害されたというニュースが流れ、規士が事件に関わっていると知ったマスコミやSNS、そして真実が家族を追い込んでいく...。

本作で清原は、受験を控えた中学生の娘・雅役を務める。平和な日々から一転、過酷な状況に突き落とされた雅を、清原はどう演じたのだろうか。

■明るい少女から不安を抱えた少女へ...心情の変化を清原果耶がしっかり体現

石川家はどこにでもあるようなごく普通の家庭。一登やフリーの校正者である妻・貴代美(石田ゆり子)の仕事は順調で、雅も志望校を目指して真面目に塾に通っている。

雅は活発で明るい女の子で、設計の依頼者に一登が自宅を内見させる時にも笑顔でそつなく対応し、内見の相手に無愛想だった兄の規士に対しては「お小遣い減るよ」と、中学生らしいセリフを口にする。塾で先生に注意されるシーンなどでも、自然体とも言える屈託のない笑顔を見せ、それがまたよく似合っている。

しかし、規士の友人が遺体で発見されたことがニュースになってから、少しずつ雅の様子が変わっていく。塾で他の生徒がSNSを見て、"規士が事件に関わっている"と噂話をしている時には目つきが変わり、夕食の時にスマホを見ながら、両親に沈んだ声でSNSでの噂を伝えたりもする。そんな雅の様子からは、平和だった日常がじわじわと失われていく様子が伝わってくる。清原は緻密な演技で、雅の心情の変化をしっかり体現している。

■追い込まれた少女の叫びが心に刺さる!清原の熱演に注目

物語が進むにつれ、事件の内容が少しずつ明らかになってゆく。同時に、連絡の取れない規士の安否や、規士はこの事件の加害者なのか、あるいは被害者なのかも、家族にとって大きな問題となってゆく。答えの出ない迷路の中で、一登や妻の貴代美、そして雅も追い込まれてゆく。両親が警察とリビングで話しているのを離れたところで見ている雅の姿は、まるで影のようだ。

もし規士が加害者なら、希望していた高校を受けられないかもしれない。そう知った時に、雅は視線を泳がせて声を絞り出し、呆然と立ち尽くした後に声を荒らげる。そんな姿を見ていると、何かに押しつぶされそうな雅の気持ちが伝わってくるし、強い共感を覚える。観る者の心に刺さる清原の熱演はさすがというほかない。

果たしてこの事件の犯人は誰なのか、規士は今どこでどうしているのか。清原はもちろん、堤や石田ら名優の演技に惹き込まれつつ、この胸を打つサスペンスの結末を最後まで見届けてほしい。

文=堀慎二郎

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