長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」

俳優

「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

恵那のもとに、同じ番組の若手ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)が、10代の女性が連続して殺害された過去の事件をめぐる冤罪疑惑を持ち込んでくる。当初は事件に関わることを拒んでいた恵那だったが、犯人とされ死刑が確定した男の冤罪を訴える人々の声に触れ、少しずつ事件と向き合い始める。

取材を進める中で次々と浮かび上がってくる矛盾と、その先に立ちはだかる組織の論理。恵那は拓朗とともに事件を追っていくうちに、報道を伝える仕事に携わる者として、そして一人の人間として、自分が何を信じるのかを改めて問い直していく。

「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

本作で印象的なのが、浅川恵那の内面の変化を細やかに表現する長澤の演技だ。物語の序盤に登場する恵那は、かつてエースアナウンサーだった面影をほとんど感じさせない。背中を丸め、どこか虚ろな目で周囲を眺め、理不尽なことがあっても愛想笑いを浮かべて受け流す。

この時の長澤は自信を失った恵那の疲弊を、表情や姿勢、声のトーンにまでにじませている。眠れない夜を過ごした恵那が、夜明け前の街を一人で走る姿からも、行き場のない感情を抱えながら、なんとか自分自身を保とうとする孤独が伝わってくる。

「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

一方、拓朗から持ち込まれた冤罪疑惑をきっかけに、自ら事件を調べ始めると、その表情にも少しずつ変化が生まれていく。事件関係者の話を聞く時には相手の言葉を逃すまいと視線を向け、納得できない事実を前にすると、戸惑いや苛立ちが表情に浮かぶ。

それまで何事にも距離を置こうとしていた恵那が、自ら考え、問いかけるようになっていく。その過程を、長澤はわずかな目つきや声色の変化によって丁寧に描いている。

もちろん、事件に関わり始めたからといって、恵那が突然強い人物へと変わるわけではない。怖気づき、迷い、時には感情を露わにする。そうした弱さを隠さないからこそ、恵那の姿には生々しい人間らしさが感じられる。

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