敏子は強い信仰心を持ち、厳しい状況でも温かな明るさを失わずに家族を支える女性だ。伊藤は、盛夫の隣で家族を見守るだけでなく、夫や子どもたちを大きな愛情で包む母親として、その芯の強さを繊細に表現している。
性格も物事への向き合い方も異なるが、互いの生き方を尊重しながら家庭を守る2人。その関係が、妹尾家の温かな空気を形作っていく。
実生活でも夫婦である水谷と伊藤だが、劇中では盛夫と敏子という人物を丁寧につくり上げている。何気ない会話や家族と過ごす時間に感じられるのは、実生活の関係性だけではなく、役柄として築き上げられた夫婦の姿だ。
妹尾家を取り巻く人々を演じる共演陣も、作品に深い奥行きを与える。小栗旬演じる近所の「うどん屋の兄ちゃん」が政治犯として警察に逮捕されるなど、妹尾家の周囲にも時代の不穏な空気が広がっていく。國村隼、岸部一徳、早乙女太一らが演じる人々の存在も、家族の外側にある社会の変化を映し出す。
そんな時代のなかで、盛夫がHに伝えてきた「自分で考えること」は、少年の成長にもつながっていく。親の言葉をただ受け入れるのではなく、自分の目で現実を見つめ、疑問を抱きながら生きようとするHの姿。そこには、父から子へと受け渡される信念だけでなく、1人の少年が自分自身の意思を育んでいく過程がある。
水谷と伊藤が演じる盛夫と敏子。その夫婦の姿を通して浮かび上がるのは、戦争に翻弄されながらも、家族の間で受け渡されていく思いの強さだ。実生活の夫婦という話題性だけではない、俳優としての2人が紡ぎ出す妹尾家の物語を、ぜひじっくりと見届けてほしい。
文=HOMINIS編集部




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