本作で印象的なのは、若き日の銕三郎が見せる危うさと、後の平蔵へとつながっていく片鱗だ。かんざしをおまさに挿してやる場面でふと見せる笑顔には、染五郎の大叔父であり、1989年から2016年まで「鬼平犯科帳」シリーズの主演を務めた二代目・中村吉右衛門の面影が重なる。
殺陣のシーンでは、流し目から一気に斬り込む鋭い太刀筋の合間にのぞかせる、冷えたような眼差し。そして、尾美としのり演じる相模の彦十から「銕さんと呼ばせてください」と言われた際に浮かべる微笑み。奔放な"本所の銕"でありながら、ふとした表情の奥に、後の平蔵へとつながる人物像が見えてくる。
とりわけ印象的なのが、駒木根葵汰演じる悪御家人・横山小平次との立ち回りの直後に見せる表情だ。相手を見据える鋭い眼差しから一転、静かに自分自身の内側へ向き直るような表情を見せる。この一連の"表情の切り替え"の鮮やかさには、長谷川平蔵という人物がたどる未来を予感させるものがある。
染五郎が演じる"本所の銕"は、後の平蔵へとつながる人物の輪郭を丁寧に描き出している。











