【タカラヅカ】花組・明日海りおが"永遠の14歳の少年"に!名作漫画を舞台化「ポーの一族」

明日海りお(写真)
明日海りお(写真)

萩尾望都の名作漫画が原作で、2018年に最も話題になった舞台の1つ、「ポーの一族」がTV初放送となる。脚本・演出を担当したのは、大ヒットミュージカル「エリザベート」などで知られる小池修一郎だ。この作品をタカラヅカで上演することは、小池が演出助手として劇団に入った頃からの悲願だったという。だが、"永遠の14歳の少年"である主人公エドガーを演じるのは難しいと思われ、実現できずにいた。それが、明日海りお主演でかなったのだ。

人の血を吸いながら永遠に生きる「吸血鬼伝説」が題材の物語はいくつもあるが、この作品もそれに属するといっていいだろう。バンパネラ(本作品における吸血鬼の呼称)の一族と出会い、迎え入れられた孤児の兄妹エドガーとメリーベル。2人だけで時を超えて生きていくことにするが、メリーベルを失ってしまったエドガーは、ある時代で学友として出会ったアランを、永遠の旅のパートナーにするため一族に誘う。

柚香光(写真左)

原作/萩尾望都「ポーの一族」(小学館フラワーコミックス) (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

原作は1話完結の短編が続いていく形式で、さまざまな時代を行きつ戻りつしながら進んでいくが、舞台化では時系列に分かりやすく組み替えられている。原作「ポーの一族」「メリーベルと銀のばら」「小鳥の巣」などを組み合わせ、一部オリジナルのエピソードが組み込まれた物語が繰り広げられる。各時代でエドガーとの出会いを記録に残してきた人物の子孫たちが一堂に会し、彼らが進行役を務めながら過去を振り返っていく方式は、舞台ならではの工夫だ。物語は原作愛読者におなじみの場面をできる限り盛り込み、セリフも忠実に再現。原作を知らない人も、作品世界に入り込みやすいよう配慮されている。原作ファンという小池修一郎ならではの、こだわりのストーリーである。

エドガーを演じる明日海りおは、2014に花組のトップスターに就任。2018年には5年目を迎え、トップスターとしては円熟の域を迎えた。しかし、神秘的な瑞々しい雰囲気は変わらぬまま、むしろキャリアを重ねるごとに、研ぎ澄まされた純粋さに磨きがかかっているようだ。そのギャップが、少年のまま永遠の時を生き続けるエドガー役にぴったりはまった。200年もの時を越えて生き続けている者だけが抱える、孤独をにじませた演技は圧巻だ。さらに、ごく普通の人間だった幸せな時代からの変貌ぶりにも驚かされることだろう。

原作/萩尾望都「ポーの一族」(小学館フラワーコミックス) (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

エドガーと共に永遠の時をさまようことになるアラン役の柚香光は、そのガラスのように壊れやすい心を繊細に表現し、明日海との並びも目を見張る美しさだ。2人を中心とした学生たちの場面は、若手男役スターの宝庫である花組ならではの見せ場となっている。そして、愛する人と生きるため自らバンパネラとなる道を選び、やがてエドガーの母親代わりとなる女性シーラは、トップ娘役の仙名彩世が艶やかに演じる。

仙名彩世(写真)

原作/萩尾望都「ポーの一族」(小学館フラワーコミックス) (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

その他にも、エドガーの父親代わりとなるポーツネル男爵役の瀬戸かずやは、一族の生き残りとしての誇りを、主治医のジャン・クリフォード役の鳳月杏は、憎めない色男ぶりを見せてくれる。そして、エドガー最愛の妹メリーベル役の華優希は、この世のものならぬ儚さを漂わせる。また、ポーツネル一家の登場シーンや、エドガーとアランが20世紀ドイツのギムナジウム(中等教育機関)に現れるシーンは美しい絵のようで、原作ファンはきっと漫画の一コマを思い出すことだろう。

タカラヅカファンはもちろん、原作ファンからも大きな注目を集めた作品である「ポーの一族」。舞台上に息づく魅力的なキャラクターたちにより織り成される萩尾作品の、幻想的な世界をぜひ味わってほしい。

文=中本千晶

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放送情報

『ポーの一族』('18年花組・東京・千秋楽)
放送日時:2019年1月1日(火)20:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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