【タカラヅカ】花組・明日海りおが同じ女性を愛する2人の皇子を演じた「あかねさす紫の花」

明日海りお
明日海りお

「あかねさす 紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る」。万葉集でよく知られるこの歌からタイトルが付けられているミュージカル「あかねさす紫の花」は、この歌の作者・額田女王をめぐる大海人皇子と中大兄皇子との恋のさや当ての物語である。1976年初演の後、何度も再演され、今なお根強い人気を誇る名作だ。

2018年の福岡・博多座での再演はこれまでにない趣向があり、ひときわ大きな話題となった。この作品には弟の大海人皇子(おおあまのおうじ)、兄の中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)、それぞれを主人公にした2つのバージョンがあるが、2018年の再演では公演期間の前半と後半で、主演の明日海りおが役替わりし、大海人皇子と中大兄皇子の2役を演じたのだ。

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

トップスターとして5年目の円熟期を迎え、元来は大海人皇子役向きの優しさや天真らんまんさを備えつつも、中大兄皇子役に求められる強さや包容力も身に付けた明日海だからできた離れ業である。2月に放送された「中大兄皇子」バージョンに続き、「大海人皇子」バージョンが4月7日(日)にTAKARAZUKA SKY STAGEで放送される。

仙名彩世

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

時は7世紀。中大兄皇子、中臣鎌足らが「大化の改新」を成し遂げ、大和朝廷の基礎が固められつつあった時代の話。大海人皇子(明日海りお)は、幼なじみであった額田女王(ぬかたのおおきみ・仙名彩世)を妻とし、幸せな家庭を築いていた。ところが、兄の中大兄皇子(鳳月杏)が額田女王に横恋慕し、強引に自分のものにしようとする。

「中大兄皇子」バージョンでは王者の風格で想いを真っ直ぐにぶつける中大兄皇子であった明日海が、大海人皇子としてまったく別の顔を見せる。愛する額田女王への疑念、尊敬していたはずの兄に対して芽生える憎しみ。明日海の大海人皇子からは、溢れ出る複雑な感情が切々と伝わってくる。「ロミオとジュリエット」のロミオ、「ポーの一族」のエドガー、そして「春の雪」の松枝清顕など、幸福の絶頂から不幸のどん底に突き落とされる役どころは明日海の真骨頂だ。

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

名場面として知られる「白雉の舞」は、大海人皇子、中大兄皇子、そして額田女王、それぞれの想いが胸に迫ってきて一挙一動から目が離せない。どれほど多くの言葉より雄弁に3人の心の動きを物語る、舞踊ならではの表現力を感じさせる場面となっている。ラストで額田女王と再会した後に、大海人皇子が歌い上げる主題歌には万感の想いがこもり、幕切れで兄への怒りを爆発させる場面では、その後の「壬申の乱」を予感させ、客席を震撼させる。

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

額田女王はなかなか共感の得にくい難役だが、仙名演じる今回の額田女王は2人の男性にただ翻弄されるというより、最終的には自己責任で道を選んだようにも見える。良き妻、良き母でありたいと願いつつ、それでは収まらず、時の最高権力者の公私にわたるパートナーとしての道を選んだ、凛としていて今の時代らしい女性像をつくり上げた。

柚香光

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

鳳月杏が演じる中大兄皇子は、色で例えるなら青である。心に秘めた赤い炎が徐々に燃え盛っていくような大海人皇子に対し、中大兄皇子は青い炎を燃やしてクールに立ちはだかる。また、「中大兄皇子」バージョンでは大海人皇子役として明日海に挑んだ柚香光が、額田女王に密かに想いを寄せる仏師・天比古を演じ、報われぬ恋心を繊細に表現。それぞれの役替わりの妙がじっくりと味わえる作品となっている。

文=中本千晶

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放送情報

『あかねさす紫の花』('18年花組・博多座) 役替わりAパターン ※「大海人皇子」バージョン
放送日時:2019年4月7日(日)21:00~
『あかねさす紫の花』('18年花組・博多座) 役替わりBパターン ※「中大兄皇子」バージョン
放送日時:2019年4月26日(金)19:00~
『Santé!!』~最高級ワインをあなたに~('18年花組・博多座) ※併演されたレビュー
放送日時:2019年4月11日(木)20:45~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

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