真風涼帆＆芹香斗亜のタッグ再来もアツい 宝塚歌劇宙組公演『オーシャンズ11』

あの大人気ハリウッド映画の宝塚版が、6月7日(日)タカラヅカ・スカイ・ステージに登場する。天才詐欺師のダニー・オーシャンが、別れた妻の心を取り戻すため、11人の仲間を募ってカジノ経営者ベネディクトに挑む物語である。宝塚版も好評で、2011年に星組で初演の後、2013年には花組でも再演。今回放送されるのは、昨年宙組にて上演されたものだ。

1幕ではイレブンメンバーが順に紹介され、2幕では宿敵ベネディクトの金庫から見事に金を盗み出し、テスの心も取り戻す。１幕ラストにイレブンメンバーが勢揃いするシーンは鳥肌モノだ。

映画ではジョージ・クルーニーが演じたダニー・オーシャンを演じたのが、宙組トップスターの真風涼帆だ。2015年に星組から宙組に組替えして2017年にトップスターに就任。華やかなコスチューム物も本作のようなスタイリッシュなスーツ物も両方よく似合うスターである。その天性の大物感もダニー役にぴったりで、イレブンメンバーが彼に付いて行きたくなるのも納得だ。

ダニーの良き相棒ラスティーを演じたのが芹香斗亜。映画ではブラッド・ピットが演じた役で、ダニーがリーダーならラスティーは参謀といったところ。包容力と知性、温かみが求められる役どころは芹香にお似合いだ。

宝塚版のラスティーにはもう1つ見せ場がある。それは奇妙な医師「ジョンソン先生」に変装してベネディクトを騙すシーンだ。ここで芹香のコメディセンスも存分に発揮される。

実は2011年星組初演の新人公演において、真風はダニー役として主演している。また、星組、花組と組替えしてきた芹香は星組版の新人公演でラスティーを演じている。つまり、8年前の新人公演におけるコンビの再結成というわけだ。

また、イレブンメンバーの1人に、ダニーに鍛えられて一人前になるライナスという少年がいるが、このライナスを2011年星組版では真風が、2013年花組版では芹香が演じている。つまり、かつてのライナスが立派に成長してダニー＆ラスティーとして戻ってきたようでもある。初演から見守ってきたファンとしては、こうした配役の巡り合わせに感慨もひとしおといったところだろう。　

宝塚版ではダニーがテスに惚れてしまったいきさつも具体的に描かれ、常にクールなダニーもテスの前でだけは純情な一面を見せる。映画ではジュリア・ロバーツが演じたテス役は星風まどか。ダニーとベネディクト、2人の男をゾッコンにさせる女性を小悪魔的な魅力で演じてみせた。

イレブンたちに対峙するのが、金儲けのためには手段を厭わないカジノ経営者ベネディクトだ。宝塚版ではちょっとコミカルな部分もある人間くさい色悪として描かれている。このベネディクト役に、これまでは誠実さが持ち味であった桜木みなとが挑み、新境地を見せている。

かつて真風、芹香が演じてきたライナス役を今回演じたのは和希そら。やさぐれた少年が一皮むけていく様を的確に演じてみせる。このほかさまざまな「能力」を持ったイレブンメンバーが登場するが、中には映画とは役割が違うメンバーも。目的は果たすが「誰も傷つけない」のが宝塚版ならではのルールなのだ。

アドリブシーンも本作のお楽しみだ。その1つはカリスマ詐欺師ソールがイレブンメンバー全員に「演技指導」をする場面、もう1つがラスティーが変装した医師の「ジョンソン先生」の登場場面だ。今回の放送でのアドリブにも注目だ。

本作の舞台となるラスベガスといえばショーの街。華やかなイリュージョンの場面も盛り込まれているのも宝塚ならでは。果たして「夢の世界」のイレブンメンバーはいかなる手法で金庫のセキュリティを打ち破るのか？お手並み拝見である。

文=中本千晶

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