退団公演を控えた宙組トップコンビ・真風涼帆潤花が魂を共鳴させる宝塚歌劇「NEVER SAY GOODBYE-ある愛の軌跡-」

真風涼帆
真風涼帆

スペイン内戦に巻き込まれていくバルセロナを舞台とした物語「NEVER SAY GOODBYE」が、タカラヅカ・スカイ・ステージにいよいよ登場する。

真風涼帆、潤花
真風涼帆、潤花

©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

第二次世界大戦前夜の1936年、バルセロナではナチスのベルリンオリンピックに対抗してオリンピアーダ・ポピュラール(人民オリンピック)が開かれようとしていたが、フランコ将軍のクーデター勃発により中止を余儀なくされる。

史実に基づいた激動を目の当たりにする中で、ポーランド生まれの写真家ジョルジュ(真風涼帆)とアメリカの劇作家キャサリン(潤花)は互いに惹かれあっていく。やがて、祖国のために戦うスペインの人々の生き方に心を動かされたジョルジュは、内戦を撮ったフィルムをキャサリンに託し、戦地に向かう。

2006年初演のこの作品は、当時の宙組トップコンビであった和央ようか・花總まりのサヨナラ公演として上演された。脚本・演出は「エリザベート」などで知られる小池修一郎で、2008年初演の「THE SCARLET PIMPERNEL」で名を馳せることになるフランク・ワイルドホーンが楽曲を提供している。

この初演に初舞台生として出演していた真風涼帆が、再演で主役のジョルジュを演じる。2018年、宙組トップスターに就任した真風は、ミュージカル「オーシャンズ11」のダニー・オーシャン(2019年)、ミュージカル「アナスタシア」のディミトリ(2020年)、そして「HiGH&LOW -THE PREQUEL-」 のコブラ(2022年)などの話題作で主演を務めてきた。
 
熱さと冷静さ、あるいは夢とリアルの両極で揺れる人物を演じるときの絶妙なバランス感覚が真風の持ち味のひとつだと思うが、「NEVER SAY GOODBYE」のジョルジュはそんな真風に良く似合う役だ。ポーランド出身で、イデオロギーの虚しさを痛いほど知り、自らを「デラシネ(根無草)」と称する、そんなバックグラウンドの重みを感じさせるジョルジュであった。

いっぽうのキャサリン(潤花)は、「ニセモノだらけの」ハリウッドに対して怒る威勢の良さが気持ち良い。その真っ直ぐさや素直さが「デラシネ」であるジョルジュを次第に変えていく。
残念ながら真風と潤は退団を発表しており、3月に宝塚大劇場にて開幕する「カジノ・ロワイヤル 〜我が名はボンド〜」がこのトップコンビの最後の舞台となる。

ジョルジュとキャサリンが表現者としての魂を共鳴させていく過程が、この物語の縦糸だとすれば、ファシズムに立ち向かい、スペイン内戦に巻き込まれていく闘牛士たちや、人民オリンピックの外国人選手の生き様が横糸だ。

芹香斗亜
芹香斗亜

©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

芹香斗亜演じる闘牛士ヴィセントは、浅黒い肌と黒髪が男の色気を感じさせる。故郷の大事な人たちを守るために戦う、その揺るぎない生き方が寡黙なお芝居から伝わってきた。

PSUC (統一社会党)の幹部アギラール(桜木みなと)は、ジョルジュと反目し、キャサリンには邪な感情を抱く。この作品の中では敵役の位置付けだが、それでも等身大の人間らしさが滲み出るのが桜木らしい。

バルセロナの市民たちがフランコ軍に立ち向かっていく場面もこの作品ならではの見どころである。市民一人ひとりの生き様の重みが集積し、圧倒的な迫力を生み出している。その先頭に立つラ・パッショナリア(留依蒔世)の歌声も圧巻だ。宝塚の舞台ならではの群集芝居の魅力も、スカイ・ステージの映像で存分に味わいたい。

文=中本千晶

この記事の全ての画像を見る

放送情報

NEVER SAY GOODBYE-ある愛の軌跡-(’22年宙組・東京・千秋楽)
放送日時:2023年3月9日(木)18:30~ほか
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE 
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物