元宙組トップスター・真風涼帆が纏う、和洋折衷の衣装も魅力の宝塚公演「El Japón-イスパニアのサムライ-」

スペイン、セビリアの近郊の街「コリア・デル・リオ」にはハポン姓を名乗る人々が600人以上いるといわれている。彼らは「慶長遣欧使節団」のメンバーとしてヨーロッパに渡ったサムライたちの末裔とされているとか。

「El Japón -イスパニアのサムライ-」はそんな伝説を元にして生まれた異色作だ。作・演出は日本物に定評のある大野拓史である。

主人公の蒲田治道(真風涼帆)は夢想願流剣術の名手であり、1613(慶長18)年に仙台藩が派遣した慶長遣欧使節団の一員としてスペイン(イスパニア)を目指すことになる。だが、使節団とスペイン国王フェリペ3世との交渉は難航し、一行はセビリア郊外のコリア・デル・リオで無為な日々を過ごすことに。そこで出会った、宿屋の女主人カタリナ(星風まどか)たちとの交流から、思いがけないドラマが展開していくことになる。
 
前半は日本の仙台藩を舞台に、物語の中盤からはスペインの宮廷や、コリア・デル・リオの街を舞台に物語は進んでいく。明るく躍動感あふれる作品である。

主人公の蒲田治道を演じるのは、本年「カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド〜」を以てタカラヅカを卒業した真風涼帆だ。在団中は「オーシャンズ11」 のダニー・オーシャン、「アナスタシア」のディミトリ、そして「HiGH&LOW-THE PREQUEL-」 のコブラなど、多彩な話題作で足跡を残したスターである。
 
本作は真風の宙組トップスターとしての大劇場作品第4作目となる。一見、無骨だが心根は優しく、心に傷を持っていたのがカタリナや周囲の人々と心を通わせる中でだんだんと変わっていく蒲田治道は、大らかな芸風が魅力の真風によく似合う役どころだった。日本からスペインに渡った治道は、着物と洋装が混じったような和洋折衷の衣装を着ているのだが、これが真風には不思議とよく似合う。もちろん前半には、裃姿や鎧兜姿もしっかり見せてくれるし、殺陣の見せ場もある。海を越える大移動を感じさせる演出が心憎い。

宿を一人で切り盛りする女性、星風まどか演じるカタリナは、その気丈さ、逞しさに不思議と共感し、応援したくなってしまう女性だ。そのカタリナに治道が剣術を教えるシーンは見る者をときめかせる。
 
芹香斗亜演じる謎の剣士アレハンドロは、飄々とした大人の男の余裕をたっぷり感じさせる。可愛らしい名前を付けた銃を使いこなし、芹香ならではのユーモアセンスも存分に発揮される役である。

悪辣で、ふてぶてしく、世渡り上手な農場主・ドン・フェルディナンド(英真なおき)の存在がやはり印象に残る。その息子であるエリアス(桜木みなと)も、その複雑なキャラクターが面白い。

やがて任務を果たした使節団は帰国することとなるが、そのとき思いがけない事件が起こる。果たして治道はいかなる決断をするのか?それは実際に見てのお楽しみ。日本物と洋物、両方の魅力を併せ持つ本作のスケール感を楽しみたい。

文=中本千晶

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放送情報【スカパー!】

El Japon -イスパニアのサムライ-(’19年宙組・宝塚)
放送日時:11月5日(日)08:30~
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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