衣装や殺陣にも注目!宝塚宙組・真風涼帆が2つの国で生きるサムライを演じた娯楽作

スペイン南部の町コリア・デル・リオには「ハポン(日本)」姓の人々がいて、「サムライの末裔」を自認している...『El Japón -イスパニアのサムライ-』は、そんなエピソードを元に生み出されたオリジナルミュージカルだ。この作品が11月にタカラヅカ・スカイ・ステージにて放送される。

主人公の仙台藩士・蒲田治道は剣の達人だが、戦で愛する人の命を救えなかったことを悔やみ、自分には剣を手にする資格はないと思っている。そんな彼が、あるきっかけで慶長遣欧使節団に同行することとなった。異国の地でのさまざまな出会いを経て、治道の心の傷も少しずつ癒えていく。

ちなみに蒲田治道は実在の人物だが、史実では戦に敗れて自害したとされている。本作では、この治道の人生を大きく膨らませ、慶長遣欧使節に同行しスペインの地に到達したサムライとして描く。

この慶長遣欧使節が日本を出立したのが1613年、帰国したのが1620年。この間、日本では大坂冬の陣・夏の陣が起こり、豊臣氏が滅亡した。使節を派遣した伊達政宗の狙いはスペイン領メキシコとの通商の開始などであり、天下を取れたらスペインを後ろ楯にしようという野望もあったといわれる。だが、使節が帰国したころの日本は、徳川幕府の支配が確立していた。

一方、使節が目指したスペインはフェリペ3世の治世。かつて「太陽の沈まぬ国」と言われたスペインも斜陽の時代にさしかかっていた。宮廷では保身ばかりを考える人々の思惑がぶつかり合い、日本からの使節など歓迎している余裕はない。

この作品は、ともに時代の転換期を迎えていた2つの国をたくましく生き抜いた人々の物語でもあるのだ。

主人公の蒲田治道を演じるのは宙組トップスターの真風涼帆。スケールの大きさが持ち味の真風にはぴったりの役どころだ。仙台藩での場面での涼やかな和装も麗しいが、スペインに渡ってからの和装と洋装をミックスしたような衣装も不思議とよく似合う。剣の達人だけに、殺陣の見せ場も多い。決して多くを語る人物ではないが、そんなシャイなところも魅力だ。

『El Japón -イスパニアのサムライ-』に出演した星風まどか

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

宮廷で歓迎されなかった一行が世話になることになる宿屋の女主人カタリナ(星風まどか)。夫を殺され、1人で宿屋を切り盛りしている。剣によって守られるのではない、自ら剣を学んで生き抜こうとする姿勢が現代の女性の共感を呼びそうだ。

そして、治道の"友"だと称する謎の自由人、アレハンドロ(芹香斗亜)。飄々と生きているようだが、剣も強いしピストルまで使いこなす。その余裕と洒落っ気が、ザ・日本男児な治道と好対照である。

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

懸命に宿屋を守るカタリナを脅かすのが、成り上がり者の領主ドン・フェルディナンド(英真なおき)だ。一行の帰国が迫る中、果たしてカタリナらはドン・フェルディナンドの張り巡らす罠にどう立ち向かうのか...?

ドン・フェルディナンドの息子で、父親とは別の意味での問題児エリアス(桜木みなと)、治道を慕う心が逆恨みに変わってしまった藤九郎(和希そら)。だが、どのキャラクターもどこかユーモラスで不思議と憎めない。そんな彼らもまた、治道の生き様にほだされ、変わっていく。そして最後にはアッと驚く結末も待っている。

私が好きなのは、一行がスペインに向かう船上の場面だ。大海原を超えて遥かなる国へ、大移動を感じさせる演出に目を見張る。日本とスペイン、2つの国を舞台にした痛快娯楽劇。和物も洋物もできる宝塚ならではの作品だと思う。

文=中本千晶

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放送情報

『El Japón -イスパニアのサムライ-』('20年宙組・東京・千秋楽)
放送日時:2020年11月8日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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