工藤遥が「受けの芝居」を積み重ねて放つ女優としての存在感

工藤遥が舞台「魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~」(2020年)で主演を務め、女優としての存在感を示した。工藤といえば2017年にモーニング娘。を卒業して女優としての活動を開始し、卒業後すぐにテレビ朝日系の「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」にレギュラー出演。さらに、舞台、映画、ドラマと数々の作品でその才能をいかんなく発揮している。

そんな工藤の女優としての存在感が堪能できる作品の1つが舞台「魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~」だ。同作品はヤマザキコレによる漫画「魔法使いの嫁」の舞台化第2弾で、人外と少女が織り成す正道ファンタジー。工藤は第1弾同様、主人公の15歳の少女・チセを演じている。この舞台の模様は3月14日(日)に女性チャンネル♪LaLa TVでテレビ初放送される。

「アイドルを卒業し、女優へ転身」ネットニュースでよく見る文言だが、その実、成し遂げるのは容易なことではない。なぜならアイドルと女優は必要とされる能力が全く異なるからだ。アイドルは、歌やパフォーマンスの他、バラエティ番組やコンサートのMCなど、全て"どう自分の魅力を発信していくか"が肝。一方、女優は芝居を通して役柄の人間性を表現していくもので、アピールするものからその方法まで全てが異なっており、"どれだけ自分を活かせるか"と"どれだけ自分を殺せるか"という目指すベクトルが真逆なのだ。

(C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会

そんな険しい道でも、キャラクター性の強い役であれば比較的対応はできる。能動的な芝居は共演者の支えを受けやすく、アイドル時代に培ったアウトプットするスキルを活用できるからだ。だが、自分以外のキャラクターから影響を受ける役柄となると、俳優ならではの"受けの芝居"の能力が必要となる。これを有することが"アイドルから女優へ転身"を成し遂げるための鍵といっても過言ではないだろう。

そういった視点から語れば、舞台「魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~」は、工藤がその鍵をしっかりと携えていることを証明している作品の1つといえる。この作品で工藤が演じているチセは、帰る場所も、生きる理由も、その術も何も持ち合わせておらず、生きることを投げ出そうとして、闇の競売会に自分自身を商品として出品するという少女で、生きることに絶望している。そんな彼女を異形の魔法使いであるエリアス・エインズワース(神農直隆)が競り落とし、弟子として、そして将来の花嫁として迎え入れる。エリアスと行動を共にすることで、孤独だったチセの人生に変化が訪れ、いつしか彼女自身も変化していくという、絶望した状態から絶えず"受けの芝居"が続く役どころ。初めての経験に直面した戸惑いや恐怖、驚き、焦り、怯えなど、チセの全ての感情が周りからの影響を受けて発動するもので、自ら発する特徴的なものはほとんどない。だが、"人外の中にいる1人の人間"であるチセのリアクションは作品の要で、チセの怖がり方1つでシーンの恐怖の度合いが変わってくるというように、観る者の感情を誘うランプの役割を果たしている。

(C)2020 ヤマザキコレ/マッグガーデン・舞台「魔法使いの嫁」製作委員会

そんな重要な役目を担うリアクションの"受けの芝居"をしながら、工藤はチセの少しずつ変わって成長していく姿を見事に表現。これといった大きなきっかけはないのだが、少しずつ確実に変化し成長していることが観ていて手に取るように伝わってくる。"受けの芝居"と積み重ねることで変化と成長を表現する繊細な芝居から、工藤の女優としての存在感を感じ取ってみてほしい。

文=原田健

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放送情報

舞台「魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~」
放送日時:2021年3月14日(日)4:00~
チャンネル:女性チャンネル♪ LaLa TV
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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