新生花組の幕開け!新トップスター・柚香光がダンスで魅せた宝塚歌劇『DANCE OLYMPIA』

昨年1月に東京国際フォーラム ホールCにて上演された花組『DANCE OLYMPIA』は、明日海りおからバトンを受け継ぎ、花組の新トップスターとなった柚香光のプレお披露目公演だ。柚香を筆頭にダンス巧者の面々が、これでもかと言わんばかりにさまざまなジャンルのダンスを踊りまくる姿が清々しい。作・演出は稲葉太地。新生花組の幕開けにふさわしい舞台だった。

柚香光は2009年入団の95期。95期といえば、娘役では月組の愛希れいか、星組の妃海風、宙組の実咲凜音とトップ娘役を輩出し、男役もすでに星組トップスターとなっている礼真琴をはじめ、これからもトップスター続々誕生の期待が大きい「奇跡の期」である。柚香もまた、その勢いをけん引する1人だ。

柚香といえば思い出すのは、昨年コロナ禍による休演開けの最初の舞台でもあった『はいからさんが通る』の少尉こと伊集院忍、あるいは、長年宝塚での上演が嘱望されていた『花より男子』の道明寺司だろう。その現代的な美貌ゆえ、漫画やアニメをもとにした作品でも、まるで原作から抜け出たような主人公を体現できてしまうのが魅力の1つである。

だが、それだけではない。スタイリッシュなダンスもこれまた魅力だ。『DANCE OLYMPIA』はそんな柚香の魅力が存分に活かされたプレお披露目公演である。

『DANCE OLYMPIA』に出演した華優希

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

ストーリー仕立ての1幕と、さまざまなダンスの洪水のような2幕という、テイストの違う2幕構成。1幕ではギリシャの戦士アキレウス(柚香)が現代のニューヨークにタイムスリップしてしまうという奇想天外な物語がダンスとともに展開する。コミカルなやりとりも柚香のキャラクターにハマっており、客席では笑いが絶えない。

下級生ながらもトップという立場としては一日の長がある華優希が、柚香を健気に支えていこうという強さと温かい包容力を感じさせる。

ブロードウェイでのデビューを目指すパット(水美舞斗)のサブストーリーが描かれているのもいい。柚香と水美、共にダンスの得意な同期コンビもまた新生花組の見どころの1つである。

(C)宝塚歌劇団  (C)宝塚クリエイティブアーツ

代わって2幕は世界各地を舞台に、さまざまなダンスを見せるショー形式のステージである。幕開けは迫力の和太鼓から。ユダヤの王女サロメとヨカナーンの物語をモチーフにしたS2 Salomeは注目の場面の1つ。雪組から組替えしてきた永久輝せあのサロメが熱く官能的に踊る。相手役ヨカナーン(聖乃あすか)の儚い美しさもたまらない。

どの場面のダンスも見応えがあるが、あえて一番を選ぶならS6 Spanish Fantasyの情熱的なフラメンコの場面だろう。柚香が床を踏み締める力強い靴音に、新トップとして花組を背負っていこうという覚悟が感じられ、これを支えるメンバーの気迫も凄まじい。

『モン・パリ』で始まり『テンダー・グリーン』の名曲「心の翼」の大合唱で締めくくられる花組メドレーであるS7 Takarazukaは、宝塚で最初に作られた組の1つである花組の歴史の重みを感じさせる。

タイトルや構成からみて、おそらく2020年に開催されるはずだった東京オリンピックを意識した作品だったのだろう。その後に起こった様々なことを考え合わせると何ともいえない気持ちになるが、それを抜きにして「ダンスの祭典」として思い切り楽しめる舞台だ。令和の「ダンスの花組」の誕生を祝福したくなる作品である。

文=中本千晶

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放送情報

『DANCE OLYMPIA』-Welcome to 2020-('20年花組・東京国際フォーラム ホールC)
放送日時:2021年4月18日(日)21:00~
チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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