ダークな作品でも圧倒的な存在感！深田恭子の確固たる意志が感じられる難役

今年5月に芸能活動の休止を発表した深田恭子。日本中に衝撃を与えた発表ではあったが、深田はこれまでブレることなく常に第一線で活動を続けてきたため、デビューして今年で25周年、初めてと言える休息を取っている。今は回復を祈りつつ、これまで出演してきた数多くの作品で深田恭子不足を補うことにしたい。

深田は1997年のドラマデビューに始まり、様々なジャンルの多数の作品に出演してきた。健気で一途なヒロイン、ロリータファッションを愛する女子高生、大富豪の孫娘ゆえの才覚で事件を解決する新人刑事...。どんな役でも"深キョン"の世界観が確立されている。

そんなキャリアの中で新境地を開拓した作品が、『連続ドラマW　東野圭吾「幻夜」 (全8話)』(2010年)だ。原作は「白夜行」の続編、姉妹編とも言われる東野圭吾のベストセラーで、主要な登場人物はみな重い罪を背負い、心に闇を抱えている。人間の業というテーマを、時に美しく時に厳しく炙り出していく。

深田は本作の主人公・新海美冬役に抜擢された。美冬は"美"と"最高の生き方"を恐ろしいまでの執念で追求し、自身の野望のためには手段を選ばず美貌を武器に男たちを弄び、のし上がっていく。日本文学史上に残る、まさに"究極の悪女"という難役である。

さらに、美冬にすべてを捧げ犯罪に手を染める青年に塚本高史、2人を追い詰める刑事に柴田恭兵...と豪華俳優が脇を固める。当時27歳の深田は、演技派俳優に囲まれながら彼らにまったく引けを取ることなく圧倒的な存在感で演技を披露している。共演者も思わず引き込まれ魅了されたと言う、溢れんばかりの美しさと気迫。これまで見たことがない妖艶な表情には、一人の俳優として大人の女性としての確固たる意志が感じられる。

当時は理解に苦しむ難しい役ゆえに挑戦だったと語っていたが、それを見事に演じ切った深田。葛藤の中で生み出された本作は、新たな一面を見せたまさにターニングポイントとなった。未見の人はぜひ、その凄みを今回の一挙放送で見返していただきたい。深田恭子の稀有な素晴らしさを楽しみつつ、彼女がまた戻ってくる日を焦らず待ちたいと思う。

文＝中川菜都美

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