新垣結衣が「人生詰み状態」のヒロインを好演!コラムニスト・吉田潮が「けもなれ」を語る

■自分を見失った人々の苦悩と現状打破を描く

要注意。このドラマは単純な胸キュンラブコメではない。今をときめく新垣結衣の主演作だが、生ぬるく都合よく展開する喜劇ではなく、痛みと変化を伴う悲劇だ。ヒロイン・深海晶に訪れる苦難はポップに淡々と描かれるが、不運と不幸の連続で結構な地獄だ。覚悟して見て。

晶は派遣を辞め、ECサイトの制作会社に営業アシスタントとして入社。ところが、ワンマン社長(山内圭哉)は晶をこき使う。雑用から商談まで、四六時中LINEで数十件の指示を爆速で送信してくる。営業部の同僚(伊藤沙莉)は無責任でやる気ゼロ。新人(犬飼貴丈)の教育係まで任される晶。社内には晶をいいように使う空気も。おまけに取引先からは謝罪で土下座を要求され、女子扱い&ちゃん付けで呼ばれる屈辱まで。それでも晶は完璧な笑顔と自己犠牲で過重労働をこなす(過労死を連想させる場面には、妙に乾いた怖さと重みがあった)。さらには4年も付き合っているが、先に進めない恋人(田中圭)も悩みの種。元カノ(黒木華)の問題があるらしく、せかすことも責めることもできず。

人生"詰み"状態の晶が行きつけのバーで出会うのが、税理士で会計士の根元恒星(松田龍平)。毒舌と無責任で女性客の評判は悪い。実は自由奔放な元カノ(菊地凛子)への思いを引きずり、優等生の兄(安井順平)との確執や、仕事上の黒いトラブルも抱える。全方位笑顔の晶と、他人に辛辣な恒星。犬猿の仲と思いきや、大切な人の気持ちや生き方を優先させ、自分の気持ちにはふたをする共通点も。

笑顔で心をすり減らす女と、ロジカルな毒舌男が織りなす、笑えて切ない物語。

"獣"になれなくても自分と向き合えば変えられる。現状打破したい人にかすかな希望を与えてくれる。

文=吉田潮

よしだ・うしお●'72年生まれ。ドラマ好きのコラムニスト兼イラストレーター。週刊誌や新聞でテレビ・ドラマ評を執筆。時々テレビにコメンテーターとして出演。著書「くさらないイケメン図鑑」など著書多数。ネコ2匹と同居中。

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放送情報

獣になれない私たち
放送日時:2021年7月10日(土)20:30~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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