19世紀末のイギリスを舞台に階級制度に蝕まれた社会を変えるため、兄弟とともに"犯罪卿"となったウィリアム・ジェームズ・モリアーティと、その計画に必要不可欠な存在として選ばれた探偵、シャーロック・ホームズの関係を描いた人気漫画「憂国のモリアーティ」。TVアニメ第1クール終了直後の2020年1月~2月には、西田大輔の脚本・演出で舞台化されて好評を博した。
そして、第2弾となる舞台『憂国のモリアーティ』-case2-が、7月23日に東京・新国立劇場 中劇場で開幕した。今作はウィリアムとシャーロックの"運命的な出会いと再会"をメインテーマに描き、前作のラストでモリアーティ陣営の一員となったジェームズ・ボンドや「切り裂きジャック」の異名を持つジャック・レンフィールドといった新キャラクターも登場する。
数学教授と私立相談役を兼業しながら、腐敗した階級制度を打ち砕くため「犯罪相談役(クライムコンサルタント)」という裏の顔を持つウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役を務めるのは荒牧慶彦、抜群の推理力で数多の事件を解決する探偵のシャーロック・ホームズ役には北村諒。ほか、ウィリアムの義理の兄・アルバート役の瀬戸祐介、弟・ルイスを演じる糸川耀士郎をはじめとするキャスト陣のほとんどが前作からの続投となっている。
舞台の幕開けを告げる鐘の音が鳴り響くと、舞台中央に据えられていたセットに、ウィリアム役の荒牧が登場。すると舞台が回り出し、物語に欠かせない人物たちも姿を現す中、荒牧は物憂げな低い声で「この国の歪み。一体どうすれば、それを正せるのか」と、ウィリアムがロンドンを犯罪都市と化そうする動機を明かしていく。荒牧がステージに降りると、シャーロック役の北村がセット上に現れ、彼らが豪華客船・ノアティック号のらせん階段の前で初めて出会い、互いをプロファイリングし合う名場面がウィリアムの視点で再現される。
優雅な口調と仕草で話す金髪のウィリアムと、巻き舌でしゃべりながら豪快に振る舞うダークブルーの髪をしたシャーロック。その出自や行動原理など、何もかもが正反対にもかかわらず、目に見えない力で引かれ合っていく2人の関係を、回り舞台を駆使したドラマチックな演出と照明で見事に表現するさまは、まさに舞台ならではといえる。また、大英帝国を揺るがす一連の事件の主犯を言い当てたシャーロックに対し、ウィリアムが「Catch me if you can, Mr.Holmes.」と囁く、屈指の名シーンにおける荒牧の演技も必見だ。
8月1日(日)まで上演される本作は7月31日(土)、そして千穐楽公演でライブ配信も実施される。原作漫画やアニメ版とは異なる、舞台ならではのキャスト陣や演出で描き出される、ウィリアムとシャーロックの対決を目に焼き付けてほしい。
文=中村実香
公演情報
舞台『憂国のモリアーティ』-case2-
出演:荒牧慶彦、瀬戸祐介、糸川耀士郎、郷本直也、設楽銀河、松井勇歩、野本ほたる、立道梨緒奈、萩野崇、村田洋二郎、北村諒
公演期間:2021年7月23日(金)~8月1日(日)
ライブ配信:2021年7月31日(土)12:00公演・17:00公演、8月1日(日)12:00公演 ※千穐楽公演
詳しくは舞台『憂国のモリアーティ』-case2-公式HP
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