凛とした佇まいから思いが伝わる...草なぎ剛が挑んだトランスジェンダー役

「ミッドナイトスワン」より
「ミッドナイトスワン」より

草なぎ剛(※草なぎの「なぎ」は正しくはゆみへんに「剪」)がトランスジェンダーの主人公を演じ、第44回日本アカデミー賞で最優秀作品賞および、草なぎ自身も最優秀主演男優賞を受賞した映画『ミッドナイトスワン』。劇場でも異例のロングランヒットを記録するなど、多くの人に愛される作品となった。草なぎ自身、「自分の集大成」と位置づける珠玉の名作が8月WOWOWにて放送される。

草なぎが演じるのは、新宿のニューハーフショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙。陽の当たらない場所で生きてきた彼女は、世間からの好奇の目、心ない言葉に神経をすり減らす日々を送っていた。そんなある日、彼女はひょんなことから、母親からネグレクトを受けていた親戚の少女・一果を預かることになる。

心を開こうとしない一果に、「わたし子ども嫌いなの」と苛立ちを隠さない凪沙。当初はどこかぎこちなさも残る2人だったが、やがて2人の間に奇妙な絆が生まれていく。そして、凪沙は一果のバレエの才能を知ることとなり、「一果のために生きたい」「母になりたい」という思いが芽生えるようになる。

「ミッドナイトスワン」に出演した草なぎ剛

(C)2020 Midnight Swan Film Partners

映画を見て感じるのは、草なぎ演じる凪沙の凛とした佇まいだ。奇をてらったわざとらしさはなく、しぐさや雰囲気は女性そのものだ。あくまでもナチュラルにそこに立っているだけなのに、ゾクッとするような色気をかもし出している。そして、そこからは言い知れぬほどの哀しみや喜びといった感情が伝わってくる。

本作のメガホンをとった内田英治監督はそんな草なぎを「憑依型の俳優」と評する。台本に沿った上で計算して役を作りあげるのではなく、その役をいったん自分の中でかみ砕き、納得した上でその役の中に自然に入り込んでいく。役に入り込むその驚くべき集中力と説得力は、多くのスタッフ、共演者からも称賛の声が相次いでいる。

(C)2020 Midnight Swan Film Partners

そんな草なぎも、本作が女優デビュー作となった一果役の服部樹咲には度肝を抜かれたという。バレエ経験者を前提としたオーディションで一果役に選ばれた服部は、撮影当時は中学一年生で13歳。演技未経験でありながらも、だからこそかもし出される彼女独特の存在感は、演技を超えた輝きがあった。

草なぎ自身も彼女を前にして、自分がこれまで経験してきた芝居のスタイルはここでは必要がない、ということを悟ったという。しかし、だからこそ彼女のおかげで、この撮影中は芝居を忘れて、ただただ凪沙としてカメラに立つことができたそうだ。「一果が僕の芝居を引き出してくれた」と語る草なぎと服部の2人が織りなす渾身の芝居は、一見の価値がある。

文=壬生智裕

この記事の全ての画像を見る

放送情報

ミッドナイトスワン
放送日時:2021年8月21日(土)13:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物