――妹・尚役の筧美和子さん、母親・京子役のしゅはまはるみさん、劇団仲間・早苗役の日高七海さん。それぞれ麻奈美との関係性や距離感が重要な人物ですが、共演されてみていかがでしたか?
「筧さんとは同じシーンが少なくて残念でした(笑)。でも、数少ない姉妹の大切なシーンの中で、筧さんに触れる場面が主だったので、ちょっと距離感のある姉妹だけど、"触れる"ということによって、ある意味、近さも表現できたと思います。髪の毛を触ってあげることで、不器用でぶっきらぼうな麻奈美が、尚をちゃんと妹だと思っていることが表現できたらいいなって。
しゅはまさんが演じる母親と麻奈美はどちらも素直になれず、ぶっきらぼうなところがあって、似た者同士なんです。母として娘に向かってくるしゅはまさんの姿に、私自身大きく影響を受けて、一緒にお芝居している時、思ってもいなかったところでグッと感情が込み上げてきたりしましたし、引っ張ってもらった部分も多かったです。
日高さんが演じる早苗は、常に一緒にいる親友のような存在。日高さんの方が小柄なのに私のことをおんぶするシーンがあるんですけど(笑)、ここでも"触れる"ことによって2人の距離がグッと近づいた感じがして、印象に残るシーンになりました」
――劇作家役ですが、松井さんも小説やエッセイを書かれているので、演じやすいといった感覚はあるのでしょうか?
「劇中で"書く"ということはそんなにしていないので、書くことや作るという共通点みたいなところは実は意外とそんなになくて。でも、居酒屋でくだを巻いてダメ出ししているシーンは、自分はされたことはないんですけど、他の人がされているのを見たことがあったので、"あぁ、リアルだなぁ"って思ったりしました(笑)」
――完成した作品を観た感想は?
「筧さんが演じている尚がすごく印象に残るなぁって思いました。それは、尚自身がスクリーン上に描かれてなくても、物語を通して尚の存在がずっと根底に走っているからだと思うんですよね。だからこそ、要所要所で尚が出てきた時、なんだかホッとするような気持ちになるんです。姉妹と家族の物語であり、麻奈美は自分自身と向き合って新しい一歩を踏み出そうとする瞬間の物語なんだなと思いました」
――タイトルにちなんで、松井さんが今"会いたい"人は誰ですか?
「友人がイギリスに留学していて、2年ちょっと会えてないんですけど、この冬に帰ってくることが決まっているので、その友人に会いたいですね」
――最後に、これから本作を観る人に向けて、見どころとメッセージをお願いします。
「私自身、この作品に関わって強く思ったのが"会いたい人にはその時に会うべき"だということでした。会えなかったとしても、会いたいという気持ちだったり、今自分が思っていることを伝えることは大切な事だと思うんです。この作品を観て、皆さんそれぞれ感じ方は違うかもしれませんが、自分の大切な人、思いを伝えたい人に、自分の心の内を伝えていただけたら嬉しいなと思います」
文=田中隆信
PHOTOGRAPHER
神藤 剛 -shinto takeshi-
作品情報
映画『幕が下りたら会いましょう』
2021年11月26日(金)公開
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