松井玲奈がシェイクスピアの傑作で見せた吉田羊と並び立つ女優としての存在感

女優として着実に力をつけ、今や「実力派」とも呼べる存在になった松井玲奈。"月9"や"朝ドラ"への出演を果たし、昨年は初の単独主演映画の公開やドラマ「プロミス・シンデレラ」(TBS系)での怪演が話題になるなど、女優として目覚ましい活躍を見せている。そんな松井の"女優としての存在感"が十二分に堪能できる作品が、昨年上演された舞台「パルコ・プロデュース2021『ジュリアス・シーザー』」だろう。

同作品は、「コリオレイナス」「アントニーとクレオパトラ」と並んで、ローマ史に基づいて描かれたシェイクスピアの有名な「ローマ劇」の一つである「ジュリアス・シーザー」を、演劇界の重鎮である森新太郎が演出し、男たちの陰謀と策略の渦巻く古代ローマの政治闘争を女性キャストだけで描いた意欲作。シェイクスピア劇が自身初となる主演の吉田羊が主人公・ブルータスを演じ、松井はシーザーの腹心の部下・アントニー役で出演。4月24日(日)に衛星劇場で放送される。

撮影:加藤幸広

「シェイクスピア」に詳しくなくても、"信頼していた者の裏切り"を表現する格言「ブルータス、お前もか?」という言い回しを広めた作品といえば、この作品がどれほどの影響力があった傑作であるかが伝わるだろう。そんな傑作の傑作たるゆえんは、古代ローマの政治劇・悲劇でありながら描かれる主人公・ブルータスの名誉欲、愛国心、友情の間の心の葛藤に、時代を超えて現代人の心を揺さぶる強いメッセージが包含されているからに他ならない。

「そのメッセージを、女性キャストだけで伝えられるのか?」と危ぶむなかれ。森の演出の下、吉田をはじめとするキャスト陣が、女性ならではのしなやかさ、パワフルさ、繊細さで、傑作の新たな魅力を紡ぎ出している。そんな圧倒的な熱量の芝居を繰り広げる硬軟取り混ぜた女優陣の中で、松井はひと際大きな存在感を示している。

撮影:加藤幸広

それが最も表出するのが、後半部分の演説のシーンだろう。シーザー(シルビア・グラブ)が人望を集め、権勢を増大するにつれ、共和制のローマが専制君主制に傾く兆候を危ぶんだブルータスらはシーザーを暗殺。その後、ブルータスは民衆の理解を得るため、演説で個人的な怨恨はないもののローマのために独裁者たらんとする野心を持つシーザーを討ったことを訴える。一方、シーザーの腹心であったアントニーはブルータスらへの復讐心を胸に「シーザーを弔うため」という口実で檀上に上がり、シーザーの死を悼む演説をすることで、間接的にブルータスらの行動に対して批判的な風が吹くよう操作する、という場面なのだが、松井は吉田が見せる表現方法とは違った表現方法で人心を掌握する演説を体現。そして、どちらも強い訴求力を有しているからこそ、表現方法の対比が色濃く表されるという効果を生み出している。

撮影:加藤幸広

吉田はブルータスの人柄や人間性、真っ直ぐさなどを加味して、理路整然と誠実に演説する芝居を披露。檀上であるため下を向いて民衆に語り掛けるのだが、常に背筋はピンと伸ばした姿勢で「公明正大さ」をアピールする心情を表現し、はっきりとした口調、眼光の強さ、毅然とした態度を用いて、自分の気持ちを正直に語り、国を思う心を真摯に訴えるブルータスを熱演している。その説得力たるや、ステージ上の民衆よろしく、観ているこちらまでも納得させられてしまう力を有している。

対する松井は、人々を扇動する力に長けた演説をするアントニーを、背筋を曲げて揺蕩して語りかけることで"民衆に寄り添う姿勢"を表現。さらに、大きな身振り手振りで感情の揺らぎをアピールするなど、吉田とは対極の表現方法で同等以上の説得力を持たせている。

撮影:加藤幸広

ここで注視すべきは、人々の英雄を暗殺したという事実の正当性を理解してもらうために命を懸けて演説するというブルータスの力強さを表現する吉田の演技の迫力を超えて、一度は納得した民衆の意向を覆すほどの演説を演じ切らなければならないということだ。

そんな高いハードルを見事に飛び越えた松井の感情豊かに人々の心を突き動かす演技から、彼女の"女優として存在感"を改めて感じてみてほしい。

文=原田健

放送情報

パルコ・プロデュース2021「ジュリアス・シーザー」
放送日時:2022年4月24日(日)17:00~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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