松坂桃李がラブストーリーに初挑戦したのは、武井咲と共演した「今日、恋をはじめます」(2012年)。原作は水波風南のベストセラーコミックで、メガホンをとったのは映画『アナザー Another』などの作品を手がけた古澤健監督。
おさげ髪の地味な優等生・つばき(武井)と女子からモテモテで頭もキレるチャラ男、椿京汰(松坂)の恋の行方は?少女漫画の王道といえる胸キュンなシチュエーションが満載の本作。9年前の松坂桃李の演技や表情にフォーカスを当てて見てみよう。
■"昭和女"の発言にポカーンとする松坂の表情が初々しい
ヒロインのつばきは、高校の入学式でピアスをしたり派手なファッションをしている同級生を見て「みんな、遊びに来てるの?」と驚くほどの堅物。まるで昭和からタイムスリップしてきたような、今流行りの"JK"という言葉とはほど遠い女子高生だ。
時代錯誤なつばきを怒らせるのが、入学式で新入生代表としてスピーチすると女子から「かっこいい!」と悲鳴があがるほど大人気の椿京汰。筆箱に名前を書いていることを突っ込まれ、「今時、おさげ。戦時中かっつーの!」とドSな京汰にからかわれても、負けじと長髪の京汰に「もっと高校生らしい髪型あると思う」と言い返すつばき。京汰は悪ふざけでクラスメートの前で堂々とつばきにキスし、"昭和女"は大事な大事なファーストキスを奪われてしまう。あれは悪夢だったと自分に言い聞かせ、キス事件の後、馴れ馴れしく近づいてくる京汰に「あんなのキスじゃない。キスは一生、添い遂げる人とするもの」とキッパリ言うつばきに、散々遊んできた京汰は口を開けてポッカーン。モテるのが当たり前の上から目線の最低男を演じる松坂桃李がレアすぎて目が離せない。
■ドSキャラの仮面がつばきによってはずされていく?
やがて2人は付き合うようになり、水族館や遊園地でデートを重ねていく。映画『プリティ・ウーマン』のごとく、京汰に服を選んでもらい、美容室に連れて行かれるシーンは女性をキュンキュンさせる普遍ポイント。恋を始めたつばきはどんどん綺麗になっていき、チャラチャラしていた京汰のライフスタイルも変化していく。
カップルにつきもののすれ違いも生まれるようになった頃、つばきは親友の西希(山崎賢人※「崎」は正しくは「立さき」)を通して、京汰の切ない過去を知ることになり、Sキャラの仮面の裏に隠した素顔に正面から向かい合う。内に秘めた孤独、陰りのある表情は現在の松坂桃李にも通じる大人っぽさ。二面性を表現した松坂のコントラストの効いた演技も見どころのひとつで、スイートなラブストーリーにチャレンジした当時の松坂の新鮮な顔に出会える映画でもある。
文=山本弘子
放送情報
今日、恋をはじめます
放送日時:2021年12月7日(火)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
詳しくはこちら