今、世の中はコロナ禍における受験シーズン終盤戦。"サクラサク"を目指して奮闘する受験生たちの姿は、昔からドラマや映画の題材として度々取り上げられてきた。その中でも、最も有名な作品と言えば「ドラゴン桜」だろう。
本作は、週刊漫画誌「モーニング」で連載された三田紀房による人気コミックが原作。ドラマ人気をきっかけに、2005年当時の東大志願者数が増加したというトピックはあまりにも有名だ。それから16年という月日を経て"令和版ドラゴン桜"と言われた続編が、昨年4月期に放送されたことも記憶に新しい。
元暴走族リーダーの変わり者弁護士・桜木建二(阿部寛)が落ちこぼれの生徒たちを東大合格へ導く――そんな爽快感溢れるストーリーとリアルに役立つ勉強法が人気を集めた2005年版「ドラゴン桜」。桜木が言い放つ「バカとブスほど東大に行け!」という名ゼリフは、今なお記憶に留めている人も多いのではないだろうか。
そして2021年版では、知識詰め込み型の"記憶力試験"から、理解度と応用力がモノを言う"実践的な学力を測る試験"へと転換したこともあり、ドラマ内の受験事情も変化。桜木が生徒たちにYouTube配信を課し、アプリを取り入れるなど、進化した勉強法が注目を集めた。
16年という年月を経て変化したのは、受験システムだけではない。無茶苦茶な言動で"暴走族弁護士"と揶揄(やゆ)されていた桜木も年齢を重ね、2021年版では生徒たちを信じる包容力溢れる人物へと成長。言動も「オリンピック選手になるよりも東大に入る方がはるかに簡単だ」「強制と服従だけの時代は終わったんだ。今の子どもの価値を認めて、信じてやる。大人の役割はその二つだけだ」と、より生徒たちに寄り添うものに変わっている。
そして、桜木のもとで東大を目指す生徒たちのキャラクターにも世相が色濃く投影されていた点が非常に興味深かった。
2005年版の生徒たちは、茶髪アシメヘアにピアスがトレードマークの矢島勇介(山下智久)、茶髪ウルフヘアの緒方英喜(小池徹平)、茶髪にミニスカート、ルーズソックス姿の香坂よしの(新垣結衣)と小林麻紀(紗栄子)と、見るからに"やんちゃ"な不良キャラ。そこに、地味で成績も伸び悩む水野直美(長澤まさみ)と、優秀な双子の弟に対抗心を燃やす奥野一郎(中尾明慶)が加わり、東大合格をめざし奮闘する姿が描かれた。
対して2021年版の生徒たちは当初、いかにも"現代っ子"といった雰囲気。将来の夢がない瀬戸輝、両親とのすれ違いに苦悩する岩崎楓、飽きっぽい早瀬菜緒(南沙良)、遠慮がちな天野晃一郎(加藤清史郎)、学年トップの成績だがマイナス思考の藤井遼(鈴鹿央士)、受験自体に興味がない小杉麻里(志田彩良)、昆虫オタクの原健太(細田佳央太)という顔ぶれだ。
そんな彼らが東大合格という目標を持ち、自分の中に眠る可能性に気づいていく過程が胸を打つ。中でも、King & Princeの高橋海人(※「高」は正しくは「はしご高」)が演じた瀬戸は、飛び抜けて成績が悪く、借金返済に追われるという家庭の複雑な事情も加わり、一度は東大受験を諦めかける...というキャラクター。
そんな瀬戸に対し、桜木は「受験に成功すれば一流大学に入れる。人生を仕切り直すことができるんだ!」と背中を押す。その桜木に対する、瀬戸の涙ながらの迫真の演技にも大きな注目が集まった。
そして、2021年版でひときわ強烈な個性を放ったのが、全国トップレベルの実力を持つバドミントン選手・岩崎楓(平手友梨奈)。オリンピック出場という両親の夢を託され、その思いに報いようと懸命に頑張る姿は、がむしゃらに前進し続ける平手自身をも彷彿とさせるキャラクターだ。両親からも、目の前の困難からも逃げずに、まっすぐ前を見つめる平手の意志的な瞳も強い印象を残した。
令和版では、かつて生徒役だった長澤まさみが指導する側にまわり情熱的な指導者ぶりを見せたほか、新垣結衣や小池徹平、中尾明慶らがサプライズ出演。山下智久も声で出演を果たし、ドラマファンを熱狂させた。
16年という月日を挟み、それぞれの世相を映す2つの「ドラゴン桜」。見比べることで、時代による描写の違いが楽しめるだけでなく、新たな気づきもあるはずだ。
文=酒寄美智子
放送情報
ドラゴン桜
放送日時:2022年3月12日(土)9:30~(全11話一挙放送)
ドラゴン桜(2021)
放送日時:2022年3月13日(日)9:30~(全10話一挙放送)
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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