鎌倉は、古くから歴史と文化を発展させてきた今昔と和洋とが混在する町である。西岸良平のベストセラー漫画「鎌倉ものがたり」では、異界と人間界が混じり合う不思議な場所とされている。その原作の世界観を見事に実写化したのが、山崎貴監督による映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017年)だ。西岸氏による大ヒットシリーズ「ALWAYS 三丁目の夕日」と双璧を成す原作漫画を、山崎監督が再びお得意のVFXを駆使して描いた超大作ファンタジーである。
堺雅人が鎌倉育ちの推理小説作家・一色正和役に、高畑充希がその新妻・亜紀子役に扮した。
人間に交じって魔物や幽霊が歩き回る姿に亜紀子が驚かされる一方、鎌倉育ちの正和にとって彼らとの共存は当たり前。地元警察に協力して魔物絡みの事件にもよく首を突っ込んでいた。そんなある日、死神の手違いから亜紀子がまだ寿命を残してあの世へ行ってしまい、正和は彼女を取り戻そうと黄泉の国へ向かうというハートウォーミングなストーリーだ。
堤真一、田中泯、國村隼、薬師丸ひろ子、三浦友和ら山崎組常連の実力派や、安藤サクラ、中村玉緒まで超豪華キャストも集結した。
多趣味で変わり者な作家がどハマりしている堺はもちろんだが、ヒロインの高畑がとにかく可愛い。「過保護のカホコ」(2017年)や「同期のサクラ」(2019年)などで見せた癖のあるキャラクターとはまた異なる、素直で怖がりで一生懸命な若妻姿が微笑ましい。初めての妖怪に怯えて1人でトイレに行けなかったり、死者に驚いて夫の背後に隠れたり。夫に怒ったり拗ねたり甘えたり、表情豊かな1つ1つの行動が小動物のようで愛らしい。不慣れな家事をこなすエプロン姿も新妻らしく、歳離れた夫でなくともキュンとくる。中村玉緒演じる推定130歳?の家政婦キンともすぐに仲良くなり、最初は怯えていた人ならざる者たちにも分け隔てなく接する亜紀子。あのつぶらな瞳で「ねっ」と微笑みかけられたら、田中泯演じる貧乏神でなくともつられて笑顔になってしまう。貧乏神との縁側でのシーンも温かくほっこりと癒される。
偏屈だが優しい夫と愛らしい若妻が暮らす不思議な街は本当に存在するのでは、と錯覚するほど高畑はファンタジーの世界にも違和感なく溶け込んでいる。鎌倉が人と人ならざる者が普通に暮らす街なら住んでみたい。亜紀子と一緒に縁側でお茶をすすりながら鳩サブレーをかじりたい。ついついそんな気持ちにさせられる。高畑のキュートな魅力が満載の本作では、心が洗われるようなピュアな愛らしさを楽しんでもらえるはずだ。
文=中川 菜都美
放送情報
DESTINY 鎌倉ものがたり
放送日時:2022年4月6日(水)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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