西野七瀬が女優として「LEVEL2」へ!ワンステージ上がった芝居と役作り

乃木坂46を卒業後、ドラマや映画などさまざまな作品に出演し続けている西野七瀬。昨年には初の舞台出演も果たし、女優としての階段を上り続けている。そんな西野の演技が評価された作品が映画「孤狼の血 LEVEL2」(2021年)だ。西野は同作品で「第45回 日本アカデミー賞」優秀助演女優賞、新人俳優賞を受賞している。

同作品は、柚月裕子の小説を原作に、広島の架空都市・呉原を舞台に警察とやくざの攻防戦を過激に描いて評判を呼んだ、白石和彌監督による映画「孤狼の血」(2018年)の続編。前作で新人刑事として登場した松坂桃李演じる日岡秀一を主人公に、3年後の呉原を舞台にした物語が完全オリジナルストーリーで展開する。西野は「スタンド華」のママで、日岡が上林組にスパイとして送り込んだ近田幸太(村上虹郎)の姉・近田真緒を演じる。日本映画専門チャンネルで5月22日(日)に同作が放送される。

西野が受賞した大きな要因の一つは、それまでに演じたことのない難しい役どころで素晴らしい演技を見せているからだろう。真緒は「スタンド華」のママとして働きながら幼い兄弟の面倒をみて暮らしており、「幸太には真っ当な道を進んでほしい」という思いから日岡に預けたという背景があるのだが、真緒が劇中に登場するや否や西野の奥妙な役作りに驚かされる。

というのも、これまで西野が演じてきた役というのは彼女のビジュアルや内から出る"かわいらしさ"がよぎっても悪影響が出ないものがほとんどで、時にその"かわいらしさ"が役の人間性に厚みをもたらしていたのだが、今作は「ヤクザも出入りする店の、海千山千のママ」という"かわいらしさ"とは対極にあるキャラクターであるため、ある種「キャスティングミスなのでは?」と思ってしまうほどに西野のイメージにそぐわない。しかしながら西野は、いろいろなものを背負いながら水商売で強く生きている女性を熱演。

中でも特筆すべきは、水商売のママであるため美しくはあるのだが、高級クラブのホステスような優雅さや上品さはなく、平成初期の水商売の"ケバさ"とずっとどこかに疲れを纏っているような"真緒のこれまでの半生"すらも落とし込んだ役作りで作品の中を生きていることだ。加えて、ネタバレになるため詳細には触れないが、幸太のことで抑え込んだ感情が爆発してしまう場面や絶望にうちひしがれるシーンなど、強く生きていながらも予想外の展開によって思わず取り乱す"激情"の表現は圧巻。日本アカデミー賞2部門受賞も納得の白熱した演技を披露している。

実は同作品は、西野の受賞も含め優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞、優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞など「第45回日本アカデミー賞」最多13部門受賞という名作なのだが、作品の魅力はやはり登場人物たちが生み出す圧倒的な熱量だろう。主人公の日岡を始め、鈴木亮平演じる"悪魔"のような男・上林や幸太、上林の出所によりその地位が危うくなる組長連中など、それぞれがそれぞれの"義"を全うして命懸けで生きているからこそ他にはない熱が生み出されている。それぞれが「金」「権力」「仁義」「思い」「信念」などを芯として物語の中で全力で生きているからこそ、観る者に力強いメッセージをぶつけてくるのだ。

そんな圧倒的な熱量を発出する一翼を担うキャラクターを表現する西野の、女優として確実にワンステージ上がった芝居と役作りを堪能してほしい。

文=原田健

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放送情報

日曜邦画劇場「孤狼の血 LEVEL2」<R-15>
※解説ゲスト:白石和彌監督
放送日時:2022年5月22日(日)22:00~ ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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