北村匠海主演映画『東京リベンジャーズ』が人々を熱くさせた理由を、石塚圭子が語る

主演の北村匠海をはじめ、吉沢亮、山田裕貴ら若手実力派が豪華共演!
主演の北村匠海をはじめ、吉沢亮、山田裕貴ら若手実力派が豪華共演!

(C)和久井健/講談社(C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

■定番ジャンルの掛け合わせで生まれた唯一無二の魅力

個性的な不良たちが激アツなケンカを繰り広げるヤンキーもの×登場人物が過去に戻って悔いの残る人生に再挑戦するタイムリープもの。エンタメ作品では定番ともいえる2つの人気ジャンルを掛け合わせることで、より幅広い層のファンを獲得することに成功した映画が『東京リベンジャーズ』(2021年)だ。

トリッキーなSF要素が重要なカギとなる本作は、ありそうでなかった新感覚の青春サスペンスとして、いわゆるヤンキー映画は苦手だった人たちをも魅了。2021年7月に公開されると、新型コロナウイルスが猛威を振るっていた時期にもかかわらず、興収45億円の大ヒットとなり、その年の実写映画興収No.1を記録した。

タケミチは大切な人を救うべく、人生のリベンジに燃える
タケミチは大切な人を救うべく、人生のリベンジに燃える

(C)和久井健/講談社(C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

原作は2017年に「週刊少年マガジン」で連載が開始されて以来、息もつかせぬ熱い展開で、多くの読者を熱狂させ続けている和久井健の「東京卍リベンジャーズ」。現在27巻まで刊行され、累計発行部数は5000万部突破(2022年1月時点)。人気はもちろん、作品としての評価も高く、2020年第44回講談社漫画賞少年部門を受賞している。

タケミチこと花垣武道は、どん底人生真っ只中にいる負け犬フリーター。ある日、彼はテレビのニュースで、高校時代に付き合っていた人生唯一の彼女・ヒナが、弟のナオトと共に、最凶の犯罪集団「東京卍會」の抗争に巻き込まれて死亡したことを知る。2人の死に衝撃を受けた翌日、タケミチは駅のホームで何者かに突き飛ばされて、線路に転落。死を覚悟した瞬間、10年前にタイムリープしてしまう。負け犬人生を歩むきっかけとなった高校時代を追体験しながら、タケミチがようやく見つけたヒナを救う唯一の方法は、「東京卍會」を消滅させることだった――。

規格外の強さを持つ、東京卍會総長のマイキー
規格外の強さを持つ、東京卍會総長のマイキー

(C)和久井健/講談社(C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

■魅力的なキャストからあふれ出る熱量

監督は『賭ケグルイ』シリーズや『映像研には手を出すな!』(2020年)など、コミック原作の実写化に定評のある英勉。原作は巨編だが、映画化にあたっては欲張ることなく、物語として区切りのよい原作の冒頭部分(1~4巻の途中まで)を、2時間きっかりという上映時間の中で丁寧に描いたところがポイントだ。原作ファンにとって大事なシーンの数々をしっかり押さえたうえで、実写ならではの迫力をとことん魅力的に映し出す。ヒットメーカー、英監督の手腕が光る作品に仕上がっている。

原作との大きな変更を挙げるとしたら、原作ではタイムリープした過去のタケミチたち登場人物が中学生であったのに対し、映画では高校生になっている点。これは現代の大人パートと、過去の少年パートを同じキャストが演じることを踏まえると、ある意味、仕方ない選択だったかもしれない。それに、実際の中学生というのは、まだまだ子どもっぽいもの。原作コミックのキャラクターたちの大人びたセリフ、一本筋の通った行動や考え方などは、時々「本当に中学生!?」と思うほどなので、むしろ高校生のほうが感覚的にはリアルだ。

ユニークな設定、手に汗握るアクション、タイムリープするたびに歴史が少しずつ変わっていくスリルなど、ワクワクさせられる魅力が満載の本作において、とりわけ観る者を惹きつけるのは、ひとクセあるキャラクターたちのかっこよさ!ヘタレのまま生きてきた自分と決別し、過去を変えることで彼女や仲間を救おうと奮闘するタケミチを演じるのは北村匠海。クールで穏やかな好青年を演じることの多い北村が、泣いたり笑ったりの感情の起伏が激しい、泥臭い不良少年を共感度たっぷりに演じ、新境地を拓いた。

そして、不良界のカリスマ的存在で、普段は飄々としているのに「無敵の男」として名高い東京卍會の総長・マイキー役は、監督をはじめとするスタッフ全員から熱烈オファーを受けたという吉沢亮。男気にあふれ、マイキーが最も信頼する相棒のドラケン役は山田裕貴。互いに足りないものを補い合い、強い絆で結ばれた2人のバディ感は見どころの一つだ。

そのほか、優しくて正義感の強いヒロインのヒナ役に今田美桜。ヒナの弟で、現代では刑事としてタケミチをサポートするナオト役に杉野遥亮。本作でタケミチの最大の敵となるキヨマサ役に鈴木伸之。タケミチの高校時代の仲間・アッくん役に磯村勇斗が扮している。

面倒見の良い弐番隊隊長の三ツ谷。強烈な存在感を放っていた
面倒見の良い弐番隊隊長の三ツ谷。強烈な存在感を放っていた

(C)和久井健/講談社(C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

また、本作では出演シーンが少なかったものの、圧倒的な存在感で強いインパクトを残すのが、仲間思いの東京卍會、弐番隊隊長・三ツ谷隆役の眞栄田郷敦や、のちに東京卍會に立ちはだかる巨悪コンビとなる愛美愛主(メビウス)の稀咲鉄太役の間宮祥太朗、半間修二役の清水尋也。続編を期待せずにはいられない贅沢なキャスティングである。

映画公開前の2021年4月に『東京リベンジャーズ』がTVアニメ化されたことで、各キャラクターの人気も急上昇。実写化キャストに対するハードルが高くなってしまったが、キャスト陣の多くが原作ファンというだけあって、ビジュアルから佇まい、内に秘めたスピリットまで、誰もがコミックのイメージそのままのキャラの魅力を体現しているのがうれしい。

コロナ禍の影響による撮影の中断が重なった結果、当初2020年10月公開だった予定がどんどん延期され、2021年夏に、やっとの思いで公開を迎えた作品であることも忘れられない。先行きがまったく見えない不安のなか、しかもエンタメ業界が大打撃を受けている時、何度撮影中止に直面しても、決してあきらめることなく、完成を信じて挑み続けた若手キャストたちの熱量が、スクリーンにガッチリと焼きついている。

人生を大きく狂わせる原因となったキヨマサと対峙するタケミチ
人生を大きく狂わせる原因となったキヨマサと対峙するタケミチ

(C)和久井健/講談社(C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

東京卍會、愛美愛主、タケミチと高校の仲間が勢ぞろいして、ガチンコの肉弾戦を繰り広げるクライマックスの抗争シーン。タケミチと宿敵キヨマサが戦う、前半とラストの2つのタイマンシーン。どれも極寒の気候での撮影だったとは信じられないほど、アドレナリンが爆発したような熱気がある。特に腕っぷしが強いわけでもないタケミチが、ボロボロになりながらも、「今度こそ!」というリベンジの気持ちで、何度も何度もがむしゃらに相手に食らいついていく姿には、感動がこみ上げてくるはずだ。もし過去に戻って、運命を変えることができるとしたら...誰もが自分の人生を振り返るテーマに思いを馳せつつ、心を強く揺さぶられる「熱さ」を体感してほしい。

文=石塚圭子

石塚圭子●映画ライター。学生時代からライターの仕事を始め、さまざまな世代の女性誌を中心に執筆。現在は「MOVIE WALKER PRESS」、「シネマトゥデイ」、「FRaU」など、WEBや雑誌でコラム、インタビュー記事を担当。劇場パンフレットの執筆や、新作映画のオフィシャルライターなども務める。映画、本、マンガは日々を元気に生きるためのエネルギー源。

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放送情報

東京リベンジャーズ
放送日時:2022年5月14日(土)20:00~、22日(日)5:55~
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2022年5月14日(土)13:00~、17日(火)17:45~
チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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