北川景子が祖母と孫の2役を演じ、戦時下の想いを語り継ぐ。艦長として高い演技力を見せる玉木宏にも注目の映画『真夏のオリオン』

池上司のデビュー小説「雷撃深度一九・五」を篠原哲雄監督が映画化した戦争スペクタクル『真夏のオリオン』(2009年)が9月19日(月)にWOWOWシネマで放送される。

舞台は昭和20年8月、第二次世界大戦末期の日本。戦局は悪化を極める中、沖縄の海域に配置されたイ−77をはじめとする日本軍の潜水艦隊は、米軍の本土上陸を阻止する最後の防衛ラインとなった。イ−77の艦長・倉本孝行は、互いに想いを寄せ合う有沢志津子から出航前にお守り代わりに手書きの楽譜を渡されていた。若き潜乗員たちの命を預かる倉本は、この戦局を切り抜けるために重大な決断を迫られる。志津子の想いが込められた『真夏のオリオン』の楽譜を胸に、起死回生の一手に賭けて希望への最後の戦いに臨んでいく。

命を賭した戦いの中でも生きる希望を決して失わないイ−77潜水艦艦長・倉本孝行は、玉木宏が演じた。『ウォーターボーイズ』(2001年)で注目を浴びた玉木。2009年当時は、珠玉の恋愛物語『ただ、君を愛してる』(2006年)や大ヒットラブコメディ「のだめカンタービレ」シリーズなど主演作が話題となり、演技力を兼ね備えた若手イケメン俳優の地位を確立していた。今作では、極限の状況下で本土防衛と乗員たちの命を預かる重責を担う若き艦長を熱演している。おおらかな笑みを絶やさず冷静に艦を操っていく倉本。海軍の軍服も凛々しく良く似合う。緊迫した潜水艦内で的確な指示を出す声も美しく、横顔も涼やかだ。戦友の壮絶な最期を聞く鬼気迫る表情、人間魚雷の出撃を許さず特攻隊員に優しく諭す姿、総員に語りかける穏やかな微笑み、その生き様すべてが魅力的だ。

(C)2009「真夏のオリオン」パートナーズ

倉本と互いに想いを寄せ合う有沢志津子、倉本と志津子の孫・いずみの2役を演じたのは、北川景子だ。ドラマ「美少女戦士セーラームーン」(2003年)で女優デビューし、『間宮兄弟』(2006年)や主演映画『Dear Friends ディア フレンズ』(2007年)など話題作への出演が続く新進気鋭の若手だった北川。あどけなさの残る現代のいずみと、戦時下を生きる志津子との違いに驚かされる。質素なもんぺ姿でも凛として麗しく、年齢以上に大人びた雰囲気を纏う志津子。覚悟が込められた敬礼も堂に入っていて、身が引き締まる想いがした。紺碧の海で繰り広げられた男たちの誇り高き戦いが、祖父母から孫へ時を越えて語り継がれていく。過去を紐解く中で、戦時下を生きた人たちの想いを知った現代のいずみの表情には、祖母・志津子の面影が見えた。

玉木の熱演に応えるように、潜水艦員を演じる益岡徹に吹越満や吉田栄作ら経験豊富なキャストや、平岡祐太や黄川田将也に太賀ら若手も迫真の演技を披露した。共に命を懸けて戦う部下たちとの絆も美しく尊い。互いに知力と体力を尽くして戦う中で、米軍と日本軍の両艦の間にも不思議な信頼関係が生まれていく。信念と誇りがぶつかり合う息詰まる攻防戦も見応えがあった。

日本にとって夏は、戦争で亡くなっていった多くの命に想いを馳せる機会が増える季節でもある。愛する人や祖国のために死んでいく悲哀や儚さを描いた名作も数多あるが、必ず生きて帰ることを胸に当時を戦い生き抜いた人々もあっただろう。遠い昔の話ではなく、彼らが繋いでくれた命や生き方が確かに今現在に続いている。若手時代の玉木や北川らによる熱演が、また見返したい戦争映画の名作を一つ生み出した。

文=中川菜都美

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放送情報

真夏のオリオン
放送日時:2022年9月19日(月)09:10~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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