物語は"火曜日の僕"を中心に展開していく。月曜日の僕は、部屋も散らかし放題の奔放な性格なので、火曜日の朝、起きるとその惨状にいつもウンザリ。「知らない人をベッドに入れるな」と書き残しておく。さまざまな人格が1つの家で暮らしているため、あちこちに付箋が貼られていて、それを頼りに1週間がなんとか回っていく。物を置く位置からシャワーの温度まで、いろいろと面倒だ。
行きたい図書館は休みで、医者に行く以外は家の中で1人で卓球をしている火曜日の僕は、地味で真面目な性格。全ての人格を知っている元同級生の一ノ瀬(石橋菜津美)から、いつも心配されている。
そんなある日、24時間で入れ替わるはずの人格が水曜日の朝になっても火曜日の自分のままだった時、火曜日の僕のモノクロームだった日常は色付いていく。呆然としながら、朝、ゴミを出しに行くと知らない女性・瑞野(深川麻衣)に挨拶される。誰だろう?と思いながら、嬉々として火曜日は閉まっている図書館に行くと、そこには司書の瑞野がいて「今日はいつもと違うんですね。シャカシャカしてないんですね」と微笑まれる。水曜日の僕が消えたことに戸惑いながら、恋をして、地味な生活から脱却しようとする火曜日の僕。7人で成り立っていた人格のバランスが崩れた時に起こる異変とは――。
初めて自分から人と触れ合おうとする青年の心の揺れと拭いきれない不安を同時に表現する中村の存在は、まるで夢と現実の挟間にいるかのようだ。分析力と鋭い感覚を持つ中村倫也という俳優の演技力が本作の不思議な魅力に繋がっている。
■どんどん追い詰められていく...後半からの結末の見えない展開もミステリー
やがて主人公の身体と心は平衡感覚を保つことができなくなり、たびたび意識がブラックアウトするようになる。これまで部屋の状態でしか知ることがなかった別の曜日の人格が話しかけてくるようになる後半の展開は、多重人格を演じる中村の変貌ぶりにドキドキ。煙草も酒も嗜み、友人とバンドをやっている月曜日の僕、アクティブで明るいスポーツマンの水曜日の僕、イラストレーターの木曜日の僕、観葉植物に愛情を注いでいる園芸家の金曜日の僕、社交的なオタクでチェスが趣味の土曜日の僕、釣り好きで自由人の日曜日の僕。7つの人格は危機敵状況の中、どうなってしまうのか?主人公の幸せを願う一ノ瀬との謎も明かされていく。
文=山本弘子
放送情報
水曜日が消えた
放送日時:2022年10月15日(土)12:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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