公開当時、気鋭の若手俳優だった福士蒼汰、野村周平、本田翼が共演したジュブナイル映画『江ノ島プリズム』(2013年)が11月8日(火)にWOWOWシネマで放送される。美しい鎌倉・江ノ島の街並み、誰もが通過する青春時代の無邪気さと挫折と淡い恋心を、フレッシュなキャストで水彩画のように瑞々しく描いたSF青春ファンタジー。新鋭・吉田康弘が共同脚本と監督を手がけ、ジュブナイルSFの名手・小林弘利が原案・脚本を担当、同じくタイムリープを扱った「時をかける少女」(1983年)や往年のNHK少年ドラマシリーズへのオマージュも詰め込まれている。風変わりな高校教師を演じる吉田羊や、朔と修太の母に扮した赤間麻里子と西田尚美、悠久の時間を過ごすタイムプリズナーという難役を務めた未来穂香も作品を彩る。
修太、朔、ミチルの3人は小学生の時からの大親友。恋と友情が入り混じった曖昧な状態で迎えた高校2年生の冬、ミチルは2人へ本当の気持ちを打ち明けられないでいた。イギリス留学も伝えられないまま旅立ちの日を迎える。出発当日に想いの綴られた手紙を受け取った朔は、見送りに向かう途中で心臓発作を起こして亡くなってしまう。迎えた朔の三回忌、修太はふとしたきっかけで朔が死ぬ前日の"あの日"に戻ることに。朔の命やミチルの想い、3人の失われた時を取り戻すため"今"と"あの日"の江ノ島を行き来する。しかし、過去を変えようとする修太に思いも寄らぬ危機が忍び寄る。
病弱な朔を見守る少し天然な高校生・修太には、福士が抜擢された。2023年1月に放送予定のドラマ10「大奥」の「3代・徳川家光×万里小路有功編」ではメインキャストを務め、出演する海外ドラマ「THE HEAD」のSeason2も同じく2023年に世界同時放送&配信を予定している。今や主演級俳優に成長した福士だが、当時は2013年前期連続テレビ小説「あまちゃん」でヒロインが思いを寄せる種市先輩を好演し、一大ブレイクを果たしたところだった。本作では、親友を失った喪失感と自身への怒りを抱えながら、全てを元に戻そうと奔走する修太を熱演している。未来を知る彼が必死になるもなかなか事はうまく進まない。ボールをぶつけられたり謎の儀式に巻き込まれたり、天然ゆえにとぼけた表情や仕草が愛らしい。失われた時間を楽しんでいるような悲しんでいるような、複雑な感情も繊細に表現した。最後の微笑みが切なく痛い。
生意気だけど憎めない幼馴染の朔は野村が演じた。今年6月には主演映画『ALIVEHOON アライブフーン』が公開し、出演作『そして僕は途方に暮れる』は2023年1月に公開を控える。当時の野村は、2012年前期連続テレビ小説「梅ちゃん先生」での素朴な好青年役で注目を浴び、出演作が相次ぐ若手注目株だった。病を抱えながらも斜に構えた少年が妙に憎めない。ぶっきらぼうで淡々とした口調の裏にも、優しさや親愛の情が込められていた。クールさと幼さが同居した普通の高校生を自然と体現している。
そして、2人に寄り添う活発なヒロイン・ミチルを演じたのは本田翼。今年はヒロインを務めた『劇場版 ラジエーションハウス』含め3本の映画が公開、主演ドラマ「君の花になる」が10月18日(火)から放送中だ。2009年から雑誌 「NON-NO」 の人気モデルとして長く活躍を続け、2012年JR東日本 「JR SKI SKI」のCMも話題に。当時女優としてのキャリアを積み始めたばかりだった本田だが、キラキラ輝く瞳と透明感はヒロイン性が抜群だ。やはりショートカットが良く似合う。明るく元気に振る舞いながら、ふとした瞬間の表情に、大人への変化を感じさせた。
若さ溢れる3人が幼馴染を演じ、恋と友情のドラマを展開する本作。およそ10年前のまだ初々しくあどけない姿は、今となっては貴重だろう。永遠だと思っていた青春が終わってしまう切なさ、その刹那的なきらめきが胸に突き刺さる。爽やかな江ノ島の風景や役柄とリンクするような、あの年代特有の儚い青さが眩しい。
文=中川菜都美
放送情報
江ノ島プリズム
放送日時:2022年11月8日(火)17:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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