患者と一緒に笑い、泣き、重病の患者が抱えがちな心の問題も熱意によって氷解させ、適切な治療へと導いていく。患者に寄り添い、優しい笑みを浮かべて過ごす時間。生死と直面しているが故に溢れる涙。ひたむきに患者の回復を願う、そんな葵の姿を見ていて涙腺が緩んだ視聴者も多いことだろう。
また、薬の知識を豊富に持つ薬剤師は、処方された薬に疑問があれば「疑義照会」によって医師に問い合わせることができる。実行すれば医師と衝突する可能性があるが、そこでも葵はあくまで信念を貫く。
容態が悪化し苦しむ妊婦のそばで、葵は産婦人科医に対し必死に自分の見解を述べる。診察と処方ができるのは医師だけであり、薬剤師にはできないからだ。検査結果と得た知識、そして強い思いを持って治療を修正させようと食い下がる葵は、まるで相手を射抜く熱い矢のようだ。真摯に患者と接する姿、必死に医師と対峙する姿。そこから葵みどりという人物の信念が痛いほど伝わってくるのは、やはり石原の演技の力と言えるだろう。
そして、このドラマにはもう1人、注目したい女優がいる。かつて乃木坂46で7回センターを務めた西野七瀬だ。
西野が演じる新人薬剤師の相原くるみは、葵にくっついてさまざまなことを学んでいく。最初は初々しく今どきの若者という雰囲気で、「(病院薬剤師に)向いてなかったら辞めようと思ってますけど」と言ってのけたりもする。リアクションもユニークで、時々ぽろっと関西弁が出たり、ベテラン薬剤師・荒神寛治(でんでん)と初対面の時の「おじいぽん?」とのセリフが可愛すぎるとSNSでも話題になるほどだった。
そんな相原も、話が進むに従い成長していく。調査を重ね服薬指導する場面では、落ち着いた態度で説得力のあるアドバイスを送り、一人前となった病院薬剤師の姿を見せてくれる。西野の演技と相原の成長も、このドラマの見どころと言えるだろう。
石原と西野に加え、ぶっきらぼうだが葵を認めている先輩・瀬野章吾(田中圭)や、クールで作業効率を重んじる薬剤部主任・刈谷奈緒子(桜井ユキ)、バタバタしながらも皆をまとめる薬剤部部長・販田聡子(真矢ミキ)ら、豪華俳優陣によって物語は紡がれてゆく。たとえ称賛されなくとも、治療を支え、命を守る病院薬剤師たちの活躍と感動を、ぜひ本作で味わってほしい。
文=堀慎二郎
放送情報
アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋
放送日時:2023年1月16日(月)12:10~
チャンネル:フジテレビTWO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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