女子体操の"レジェンド"寺本明日香「9回目の代表入りでも、緊張に慣れることはない」

10月4日に開幕した「世界体操ドイツ・シュツットガルト2019」(テレビ朝日系にて10月8日(火)～13日(日)放送)は、これまでとは異なり女子団体からスタート。決勝進出こそ逃したものの、東京五輪の出場枠を見事獲得した女子団体に続き、個人総合での注目は、リオ五輪で52年ぶりの入賞を果たした寺本明日香に注がれている。今回の世界体操では、まさかのケガで代表落選となったエース・村上茉愛の穴を埋めるべく、キャプテンとして女子チームを牽引する重責も背負う。果たして、世界の上位にどこまで食い込めるかが注目される中、今大会に懸ける意気込みを聞いた。

――キャプテンとしての役割をどのように意識していますか？

「今回は、初代表となる選手が補欠を含めて2名います。経験者である畠田(瞳)、杉原(愛子)、梶田(凪)の3人は心配ないと思いますが、初代表の松村(朱里)をどれだけ私が引っ張っていけるかが、チームをまとめるカギになる気がしますね。私は、もともと他人に注意したりすることが苦手でしたが、今年は意識して、あえてきついことをチームメイトに言ったりして、いい意味でピリッとした緊張感を与えることができていると感じます。やはり、生活面を含めて、言うべきことは言わないといけないし。でも、チームの雰囲気はすごくよくなっていると思います」

――代表をまとめるチームリーダーには、どんな姿勢が必要ですか？

「プライベートでは仲良くしていても、練習に入ったらオンオフをしっかり切り替えること。チームリーダーとしては、まず自分自身の練習をしっかりすることが一番大事だと思っています。たとえばチーム練習をしていて、できない選手がいた時に、私がしっかりこなしてやれるということを証明すれば、必ずついてきてくれると信じているから」

――日本とドイツでは時差もあるし、環境の違いとも戦わないといけないですね。

「国際大会では、時差の違いもあるけど、器具の違いがすごく大きいんです。例えるなら、テニスのグラスコートとハードコートぐらい違いがあって、国内の大会とは別物。段違い平行棒のバーとか、素材や硬さ、しなりなど、全部が違うんですよ。同じようにスイングしても、飛んでいく方向がまったく変わってしまうから、合わせるだけでも大変なんです。合宿では同じ器具を使用して合わせるんですけど、あとは現地入りして、実際の新品の器具にどこまで感触を合わせられるかが勝負です」

――東京五輪の出場権は、昨年の上位3ヶ国を覗く予選9位が条件です。ずばり、獲得の自信は？

「五輪のメダルを目標にしているので、ここで負けてはいられません。ただ、簡単に出場権が獲れるとは思っていないし、厳しい戦いにはなるでしょう。でも、とにかく、選手ひとりひとりが0.1点を大事にして取っていけば、自然といい結果がついてくると信じています」

――厳しい競技生活かと思いますが、リフレッシュ方法は？

「友だちと焼肉を食べに行ったりもしますけど、結構ひとり遊びが好きなので、オフはひとりでショッピングに出かけたりすることが多いです。海外遠征時でのリフレッシュ法は、もっぱらYouTubeですね。王道の"水溜まりボンド"や"ふてこっちTV"など、お気に入りのYouTuberの動画をチェックして、リラックスしています」

――最後に今回の世界体操への意気込みをお願いします。

「日本代表に選ばれるのは、今回のドイツで9回目。それでも、世界体操は緊張するし、慣れることはありません。ただ、それはどの選手も同じだと思うんです。まあ、(内村)航平さんレベルになれば緊張しないかもしれないけど...。世界体操でも県大会でも、1本の演技にかける点では一緒です。平常心を保って、余計な緊張に縛られることなく、思い切ってやろうと思います。経験を武器に、今大会では体操ニッポンの"レジェンド"になれるような活躍をしたいです！」

文＝渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)　撮影＝中野理

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