フィギュアスケート界にとってシーズンオフとなるこの時期。今年はファンが楽しみにしていたアイスショーなども軒並み中止となったが、新型コロナウイルスの収束状況を慎重に見極めつつ、今後の大会実施に向けて調整が続けられている。トップスケーターたちも、平常時であればこの時期は新シーズンに向けた様々な調整に充てられるが、コロナ禍により練習すらままならない日々...。2019年末に全日本選手権王者に輝いた宇野昌磨もその一人だ。
■全日本王者・宇野昌磨が辿った波乱の2019-2020シーン
平昌五輪での銀メダル以降、世界選手権でも2年連続で銀メダルを獲得するなど、世界トップクラスの実力を証明してきた宇野。しかし、幼少期から師事したコーチの下を離れて新たな環境で臨んだ2019-2020シーンは、グランプリシリーズ第3戦のフランス杯で自己最低の8位に沈み、続く第5戦のロステレコム杯も4位に。前半はメインコーチ不在の中で厳しい局面が続くも、そのロステレコム杯では、帯同したステファン・ランビエールコーチと"キス・アンド・クライ"に笑顔で登場するなど、徐々に、復調の兆しを見せていった。
そして迎えた全日本選手権では、4年ぶりに出場しSPで首位に立った羽生結弦を相手に、フリーで逆転優勝を遂げた宇野。全日本選手権4連覇が懸かったこの大会で、プレッシャーを跳ね除け、羽生との直接対決を初めて制したことでも大きな話題に。以降は正式なコーチとして就任したランビエールコーチの指導の下で、世界選手権に照準を合わせて練習拠点を海外に移していた。その結果、代表に決定していた四大陸選手権を欠場することにはなったものの、課題のジャンプ精度の向上を目指し、プログラムの完成度を高めることにも余念がなかった。
■完璧な4回転ジャンプ!「チャレンジカップ2020」で見せた会心の演技
そんな中、宇野は今年2月にオランダのハーグで行われた「チャレンジカップ2020」に出場。日本からは宇野のほかに田中刑事、紀平梨花、横井ゆは菜が出場したこの大会の男女シングルとペアが、6月3日(水)からJ SPORTS 4にて放送される。ショート、フリーともにトップを守った宇野は、合計290.41点で見事に優勝。記録でも前年の四大陸選手権でマークしたフリーの自己ベストを上回った。フリーでは不安を抱えていたという冒頭の4回転サルコウをはじめ、3種類4度の4回転ジャンプに果敢に挑戦。それまでの不調など微塵も感じさせず、これ以上ない形でパーフェクトなジャンプを披露したのである。
フランス杯でどん底を味わった後、すがる思いで師事したというランビエールコーチの下で"スケートを楽しむこと"を取り戻した宇野は、この大会でスケーターとして一皮むけたように見える。不安定だったジャンプもウソのように精度を増した。そんな矢先でのコロナウイルス騒動だっただけに、内心は忸怩たる思いもあるかもしれない。
折しも、国際スケート連盟(ISU)は、北京冬季五輪のプレシーズンにあたる2020-2021シーズンに適用されるジャンプの基礎点の改定を発表したばかり。予想だにしなかった今回のコロナ禍はもちろん、今回の改定が宇野をはじめ各選手の演技構成にどのような影響を与えていくか。不安も入り混じるが、自ら大きな壁を乗り越えた宇野だけに、さらなる飛躍に期待したい。
文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)
放送情報
チャレンジカップ2020
放送日時:2020年6月3(水)17:30~
チャンネル:J SPORTS 4
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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