振付家・ダンサーの下島礼紗が活動を通して描く未来図

下島礼紗
下島礼紗

振付家・ダンサーの下島礼紗が、7月23日(日)放送の「ART & CULTURE ~今を生きる表現者たち」に出演。同番組は文化芸術の領域で創作活動を行うアーティストたちを紹介するもので、横浜をはじめ国内外に表現活動の場を広げる彼らの今を追う。ダンスカンパニー「ケダゴロ」を主宰し、実際に起きた事件や社会問題を題材とした作品で観る者を揺さぶる下島が、「世界を解釈する手段としてのダンス」について語る。

今回、下島にインタビューを行い、「ケダゴロ」結成の経緯やダンスという表現を選択した理由、自身にとってのコンテンポラリーダンスについて語ってもらった。

――ダンスカンパニー「ケダゴロ」について教えてください。

「2013年に桜美林大学の仲間たちと一緒に立ち上げました。実はその前に、ダンスを小さい頃からやってきた人たちと一緒にダンスカンパニーみたいなものを立ち上げていたのですが、いろいろな理由でそれが終わってしまって、『この後の人生、どうしていこうかな』と考えた時に、桜美林大学で演劇でもダンスでもなく『人生どうしていったらいいんだろう』といった思いを抱えた"世界の片隅にいるような人たち"に出会って、その人たちをかき集め『まずは一回、何かやってみよう』ということで立ち上げたのが『ケダゴロ』でした。1回きりのつもりだったんですけど、そこからずるずる続いて、気が付いたら10年経っていたんです(笑)。

『ケダゴロ』というのは、鹿児島弁で『獣の糞』という意味で、糞という道端に落ちていて誰かにとっては汚くて不必要で排除したいものですが、例えばハエとかにとっては大切な命の源になる。"誰かにとってはとても必要な栄養分になる"。そういう活動をしていきたいと思って『ケダゴロ』という名前を背負っています」

振付家・ダンサーの下島礼紗
振付家・ダンサーの下島礼紗

――表現手段としてダンスを選択した理由は?

「ダンスに出会ったきっかけからお話すると、7歳の時に友達に誘われて鹿児島の町のジャズダンス教室に通い始めたんです。人見知りだったので、しばらくはただお母さんの後ろに隠れて見ていただけだったんですけど、ある時、ジャズダンスの先生が突然、『地域を盛り上げたい』と言い始めて、よさこい踊りを始めたんです。ジャンダンスを踊りながら、よさこい踊りの鳴子や扇子を持っているという状態で、毎週末、いろんな地方に行って踊りを通して交流を広げていったのです。そうなってからダンスがすごく楽しくなったんです。今思えば単にダンスが楽しかっただけじゃなくて、訪れた地域でおいしいものを食べたり、その町の人たちと喋ったり、その土地の文化を知ったりできたのが楽しかったんですよね。そういった経験からも、『ダンスは世界を解釈する一つの手段だ』と言っているのです。『ダンスは踊るためのものではなくて、世界を知るためにやっている』というふうに思っています」

――作品づくりについて教えてください。

「私のカンパニーでは、クリエーションする時に『演出実験』と呼ばれるものをやっています。とにかく出演者たちにたくさんのお題を出してそれをやらせて、たくさんのトライ&エラーが起こっていく中で少しずつ作品を構築していきます。一つの作品を創るのに100個以上の実験をして、実際に使われるのは3つぐらいですね。

私が作品を創るときにすごく大切にしていることは『エラーを面白がること』で、例えば、"総括"の名の下に仲間同士でリンチ殺害を行った連合赤軍事件を題材とした《sky》という作品では、『演出実験』で実際にダンサー同士を殴らせたり、冷たい氷を持たせたりしたんです。でも、ある時、ふと『なんでこいつらはこんなに私の言う事をきくんだろう?』って思って、そっちが気になり始めちゃったんですよ。『これは振付である』と押し付けると何でもやってしまう。"出演者におよぶイデオロギー"とか、振付家を頂点とする"ヒエラルキー"など、本番を目指していくダンスカンパニーの実態そのものが浅間山荘事件と同じロジックで出来上がっているのではないかということに気づいたんです。そういったこともクリエーションの実験の過程であらわになっていく。そうやってクリエーション当初に考えていた『作品』そのものが覆されていくんです。

だから私は、実験をするためにお題を出すんですけれども、それが自分の頭で考えた結果にならないことがすごく大切だと思っています。自分から発した何かが、ダンサーたちの肉体を通して別のものになって返ってくる。そこで初めて、私が気づかされて作品が出来上がっていく。そして、それを観客に投げかけることで、今度はまた観客から新しいレスポンスが返ってくる。そういう未知なるところに向かって創作をしていくことが、すごく大切なことだと思っています」

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放送情報

ART & CULTURE ~ 今を生きる表現者たち 振付家・ダンサー:下島礼紗
放送日時:2023年7月22日(土)27:50〜
2023年7月23日(日)07:50~
2023年7月29日(土)12:15~ 他
チャンネル:スポーツライブ+ 他
※放送スケジュールは変更になる場合があります

【配信情報】
ART & CULTURE ~ 今を生きる表現者たち 振付家・ダンサー:下島礼紗
放送日時:2023年7月21日(金)12:00〜12月31日(日)
https://spoox.skyperfectv.co.jp/static/sales/content/art-culture/

制作協力
アーツコミッション・ヨコハマ
https://acy.yafjp.org/

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