将棋界の若きスター・藤井聡太七段が2019年に見せた活躍と進化

藤井聡太七段
藤井聡太七段

順調に力を伸ばしつつある将棋界の若きスーパースター藤井聡太七段。10代は力が伸びる時期であり、2020年は更なる成長、結果が期待される。ここでは藤井七段の2019年を振り返ってみよう。

■朝日杯将棋オープン戦2連覇、王将リーグに残留

まずは2月の朝日杯将棋オープン戦2連覇が大きな結果だ。本戦1回戦から稲葉陽八段、糸谷哲郎八段、行方尚史九段、渡辺明三冠と、トップ棋士を圧倒しての優勝だった。特に渡辺三冠はこの1年半ほど圧倒的な強さを見せており、早指しとは言え藤井が完勝したのは大きな衝撃を与えた。

そしてもう1つが秋の王将リーグ入り。森内俊之九段や佐藤康光九段、谷川浩司九段などの永世称号を持つ棋士を破って、トップ棋士の待つリーグ入りを決めた。その中で勝ち越して残留を決めたのは、素晴らしい結果だろう。

戦法の面で言えば、これまで先手番では角換わり一辺倒だったところに矢倉を取り入れたのは印象的だ。古い形にも的確な対応を見せ、序盤センスの高さを示す結果となった。作戦のレパートリーを増やすことにより、相手に狙いうちをされるリスクも減ることだろう。後手番では2手目△8四歩で、相手の作戦を迎え撃つところはこれまで通りだ。仕掛けの前に相手にリードを許すことはほとんどなく、若くて経験がないにも関わらず序盤の安定感があるところは藤井の特長の1つと言える。

痛い敗戦で言えば、前期順位戦10回戦の近藤誠也六段との対局が挙げられる。昇級争いのライバルに敗れてしまい、9勝1敗の好成績ながら順位の差で昇級には届かなかった。順位戦では初の敗戦であり、それが昇級を逃す結果となったのは痛い。名人に挑戦するためには順位戦でA級に到達することが必須となっているからだ。

■トップ棋士相手に善戦、2020年への期待が高まる

王将リーグ最終戦の広瀬章人竜王戦も印象的だ。局面、時間ともに苦しい将棋を追い上げて逆転にこぎつけたが、最後の最後で誤り再逆転となってしまった。勝っていれば史上最年少でのタイトル挑戦であり、数々の記録を打ち立ててきた藤井が大一番で負けたのはかなり珍しいことだ。

竜王戦は3期連続でランキング戦を優勝し、決勝トーナメント進出。活躍を見せたものの、こちらは豊島将之名人に阻まれた。豊島にはここまで4戦全敗となっており、藤井にとって越えなくてはならない壁となっている。

NHK杯戦、銀河戦、日本シリーズなどの早指し棋戦ではベテラントップ棋士に敗れた。通常の若手棋士は時間の長い将棋よりも早指しの方が活躍を見せるのだが、藤井の場合は早指しよりも5時間、6時間の方が安定して結果を出している。とはいえ朝日杯では結果を出しているし、経験を重ねるとともに早指しでも勝ち出すことだろう。

序盤、中盤、終盤スキのない指し回しを見せる藤井だが、弱点を強いてあげるとすれば時間配分だろうか。王将リーグで豊島将之名人、広瀬竜王に敗れた将棋も、相手が多く時間を残している状況で1分将棋に追い込まれていた。しかし時間を使って考えることも長い棋士人生で見れば財産になるだろうし、決して無駄なことではない(いわゆる羽生世代の棋士も若い頃は大長考を重ねていた)。

高校生活も残り少なくなってきた。すでにトップ棋士とも遜色ない強さを見せており、タイトル戦の檜舞台で戦う姿を見られる日が待ち遠しい。月並みの言葉だが2020年はタイトル挑戦、獲得を期待したいところだ。

文=渡部壮大

この記事の全ての画像を見る

放送情報

第69期 大阪王将杯王将戦 二次予選 谷川浩司九段 vs 藤井聡太七段
放送日時:2019年12月17日(火) 18:15~
藤井聡太~王将戦挑戦者決定リーグ戦を振り返る~
放送日時:2020年1月1日(水) 14:00~ほか
チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。

詳しくはこちら

キャンペーンバナー

関連記事

関連記事

記事の画像

記事に関するワード

関連人物