空前の社会現象を巻き起こし、日本のドラマおよび映画史に残る金字塔となった「踊る大捜査線」シリーズ。今回、スピンオフを含む劇場版6作品が一挙放送される「踊る」の魅力を伊藤さとりさんに語ってもらった。
シリーズの大ファンであり、本広克行監督とも親交がある伊藤さん。劇場版では監督独自の演出が際立っているという。
「1作目の『―THE MOVIE』には、特に本広さんの大好きなハリウッド大作やアニメ作品へのオマージュが随所に散りばめられています。それによってドラマを見ていた人だけじゃない、映画ファンもみんな楽しめるシリーズになったのではと思いますね。また本広監督の演出は少し変わっていて、画面のセンターにいる主人公だけでなく、背景にいる役者から一瞬だけ映るエキストラに至るまで、全員に演技指導しているんです。警察署内のシーンなんかは顕著ですが、ヒキの画がガチャガチャしていて、いま見ても細部に発見があるから面白い」
そんな画づくりの中で輝くのが、個性的な俳優たち。織田裕二らメインキャストだけでなく、当時は知る人ぞ知る存在だった俳優も多数出演している。
「登場人物のキャラが立っているのも『踊る』の魅力ですが、演劇界で話題になっている俳優や、本広さんお気に入りの人たちがキャスティングされています。ムロツヨシさんがスピンオフから登場したり、滝藤賢一さんが中国人刑事に扮していたり......今ほど注目されていなかった、『この人も出てたの!?』という役者たちがみんな楽しそうに演じていますよね(笑)。脇のキャラクターまで注目してもらおうという見せ方は『踊る』特有で、主人公は1人ではない、全員が主人公なんだということを体現した作品でもあるんです」
「踊る」のすごさは数字にも表れている。第2作の興行収入173.5億円という記録は、実写邦画ではいまだにトップだ。
「どうしてここまでヒットしたのかを考えると、"仕事に対して個人の感情は必要なのか"という究極にして普遍的なテーマを描いていることが大きいのかもしれません。物語の舞台は警察署ですが、どんな企業や職種であれ、このテーマは誰もがぶつかる壁です。だからこそ、この作品が多くの人の心に刺さったのではないでしょうか。私は映画イベントの司会をしていて体感したのですが、『―THE MOVIE2』のヒットによってテレビ局が積極的に映画への出資を始め、2000年代以降はテレビ局製作の映画が当たり前になりました。『踊る』は間違いなく、日本の映画業界を変えたんです」
いとう・さとり●ハリウッド作品から邦画まで、映画舞台挨拶のMCや記者会見の司会を担当。映画誌などで執筆する一方、日刊スポーツ映画大賞などの審査員も務める。
取材・文=山崎ヒロト(Heatin' System)
放送情報
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!〈4Kデジタルリマスター版〉
放送日時:2022年3月19日(土)23:10~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
交渉人 真下正義〈4Kデジタルリマスター版〉
放送日時:2022年3月20日(日)21:00~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
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