第一話「犬とチェンソー」では、デンジが若いヤクザに「このタバコ食ったら100円やるよ」と言われ、笑顔で「いただきます」と口に放り込む場面があるのですが、このシーンも印象的でしたね。
そして、ラストでチェンソーマンとなったデンジに、リーダーのマキマさんが「君の選択肢はふたつ。悪魔として私に殺されるか、人として私に飼われるか。飼うならちゃんとエサはあげるよ」と言うんですが、デンジが「エサって、朝飯はどんなの?」と聞くんです。マキマさんが「食パンにバターとジャム塗って、サラダ、コーヒー、あとデザート...かな?」と言うと、デンジが「...最高じゃないっすか」って言って、スタッフロールが流れるんですけど、その終わり方もすごく良かったですね。
■マキマさんって妖艶でリアリティのないエロさがある
マキマさんは、女性キャラクターの中で、正直一番好きかもしれないですね。なんか妖艶で。「結局、男ってこういう女の人好きだよな」っていう感じがあるんですけど、リアリティのないエロさがありますよね。アニメキャラならではの「男の頭の中にある美女」といった感じがすごいしますよね。第5話「銃の悪魔」で、デンジが初めて胸をもんでみたけど大したことなかった、と落ち込んでいる時に、マキマさんがデンジの指を甘噛みしながら「デンジ君の目が見えなくなっても、私の噛む力で私だってわかるくらいに、覚えて」というシーンがすごいんですよ。ホントは絶対、何とも思ってなさそうな無慈悲な感じが、すごいいいんです。マキマさんを演じているのは、楠木ともりさんですが、今までの楠木さんのイメージではなかったので驚きがありました。可愛いようで可愛くないし、バケモノみたいで、セクシーさの中に人間味がないというキャラクターを演じるのは、大変だったと思います。
ハイクオリティなアニメを作り続けているスタジオ、MAPPAさんの作品とあって、印象的なシーンもたくさんありました。オープニングでデンジたちが交差点を歩いているシーンで、映像が音楽に合わせて少し巻き戻ったりするところもカッコいいですよね。アニメだからこそ描ける映像だけれども、実写にも寄っているというバランスがうまく取れている作品だと感じます。そして。第4話「救出」でのヒルの悪魔とデンジのバトルシーンは、ちゃんと大きなものが大きく見えるんですよ。「この敵、でかいな」とちゃんと思える遠近感がすごいな、と思いました。
デンジをはじめ、各キャラクターの立体感や人間味はもちろん、毎回変わるエンディングテーマも素晴らしい「チェンソーマン」。この2年間に誕生したアニメで最も好きな作品です。
取材・文=中村実香
岩井勇気●1986年生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑とのお笑いコンビ「ハライチ」として活躍。新潮社『僕の人生には事件が起きない』 『どうやら僕の日常生活は間違っている』が累計20万部突破。放送されるアニメ作品はすべてチェックし、毎日放送「岩井 狩野 えびちゅうの推しかるちゃー」やABEMA「SHIBUYA ANIME BASE」など、漫画やアニメに関する番組でもMCを務める。
放送情報【スカパー!】
チェンソーマン 一挙放送第1~12話
放送日時:2024年10月14日(月)21:00~
チャンネル:アニマックス
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