芸人・サンキュータツオが語る、近年のアニメ作品から見られる「新世代のヒーロー像」

「生まれ持った才能がなければヒーローにはなれない」というイメージを持ちがちだが、実はそんなことはなく、近年はヒーロー作品に変化が起きているそう。「僕のヒーローアカデミア」「ワンパンマン」を例に、その特徴をサンキュータツオさんに聞いた。

■2人の主人公は努力の結果、ヒーローになっている

「ヒーローアニメの主人公といえば、もともと優れた能力を持ったキャラクターを想像する人が多いでしょう。しかし最近では、ごく普通の人が努力してヒーローを目指すなど、違った視点から描かれた作品も増え、日本独自の進化を遂げているんです」とサンキュータツオさん。

「僕のヒーローアカデミア」

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会 

「『僕のヒーローアカデミア』は人口の8割が特殊能力を持って生まれてくるという独特な世界観で物語が展開されます。そんな中、主人公・緑谷出久は特殊能力を持っておらず、ヒーローに憧れている普通の少年。この作品は能力のことを"個性"と呼んでいることも素晴らしく、現実世界にも通ずるものがあります。人間は何らかの個性を持って生まれてきますが、どうやって人のために生かすか、どう職業にしていくかに似ていると思いますね。主人公は何の個性もないことにコンプレックスを抱いているんですが、周りには個性を持っていても生かしきれずに悩んだりする人もいて、我々の悩みにも当てはまります。ですが、そもそも主人公がヒーローに憧れたり、なりたいと思うこと自体がすでに才能であり個性なんです。絵を描くのが好き、人の話を聞くのが好きということも個性。この作品を読むと、個性とは何だろうと考えさせられますし、自分の個性にも気付くことができます」

また、衝撃作品として話題になったのが「ワンパンマン」だ。

「ワンパンマン」

© ONE ・村田雄介/集英社・ヒーロー協会本部

「この作品は、他の作品のヒーロー像からは一線を画しています。どんな相手でも最後には一撃のワンパンチ(=ワンパン)で倒してしまうため、ヒーロー活動に飽きてしまったサイタマという男が主人公です。敵を一撃で倒すというオチが決まっているのにどんな展開になるの!?と最初は思いましたが、そのワンパンに至るまでの過程が面白いんです。この作品は、サイタマが何でもワンパンで倒せるように至った過程が一切描かれていないんですよね。ひたすら努力をしてから3年経ちました、というところから始まるんです。サイタマはすごい力を持っていながらも、それを誇示せず、力を使って何かを解決しようとも全く思っていません。それゆえに世の人から評価されていないので、お金もなく慎ましやかな生活を送っている特殊なヒーローです。でも、困っている人がいれば助けに行くという、彼の生き方の美学がそこにあります。この2作品を見れば、日本のヒーロー作品の進化が実感できると思います」

取材・文=横前さやか

サンキュータツオ●'76年生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として活動しながら、大学では言語学などの非常勤講師も務める。アニメなどサブカルチャーにも造詣が深い。

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放送情報

ワンパンマン
放送日時:2021年7月11日(日)22:00~
チャンネル:カートゥーン ネットワーク

僕のヒーローアカデミア 一挙放送
放送日時:2021年7月22日(木)8:30~
チャンネル:アニマックス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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