人気や運ではなく、純粋に"歌声"だけで競うというコンセプトで、AKB48グループの新しいプロジェクトとして開催された「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」。1月11日に東京・赤坂ACTシアターで行われた決勝大会は、155人が参加した予選を勝ち抜いた20人が出場した。会場に駆けつけたファン、そして生中継されたTBSチャンネルを見ているファンが見守る中、20人がその頂点を競い合った。
決勝大会のルールは、20人が4つのグループに分かれて決勝歌唱予定曲2曲のうちの1曲を歌い、各グループの点数上位の2名がファイナルに進出。ファイナルでは8人がもう1曲を歌い、その点数で優勝者が決まるという流れとなっている。サッカーのW杯のように組み合わせ(グループ分け)も重要となるが、どちらの曲を最初に歌うのかも迷うところ。予選を1位で突破した岡田奈々(AKB48/STU48)が優勝候補の筆頭ではあるが、実力は拮抗しており、その日のコンディション次第では大きな波乱が起こっても不思議ではない。
点数を付ける審査員にもプレッシャーがのしかかる。そんな大役を、AKB48グループの楽曲を数多く手がけている作曲家・井上ヨシマサ、幅広いジャンルのアーティストをプロデュースしているミュージシャンの十川ともじ、「NHK紅白歌合戦」に2年連続出場した演歌歌手の丘みどり、ミュージカルを中心に舞台で活躍している唯月ふうかの4人が務めた。応援ゲストとして、太田奈緒(AKB48)、大場美奈(SKE48)、小嶋花梨(NMB48)、松岡菜摘(HKT48)、福田朱里(STU48)も出席した。
第1組は、白間美瑠(NMB48)、神志那結衣(HKT48)、門脇実優菜(STU48)、山崎亜美瑠(NMB48)、坂本愛玲菜(HKT48)の5人が登場。難易度の高いaikoの「カブトムシ」を見事に歌いきった山崎と松田聖子の「赤いスイートピー」をピュアな歌声で表現した坂本がファイナルに駒を進めた。
第2組は、秋吉優花(HKT48)、高柳明音(SKE48)、大竹ひとみ(AKB48)、横山結衣(AKB48)、矢野帆夏(STU48)。その中から、椎名林檎の「丸の内サディスティック」を表現力豊かに聴かせた横山、今井美樹の「Goodbye Yesterday」を爽やかに歌った矢野が選ばれた。
第3組は、予選1位通過の岡田奈々に、武田智加(HKT48)、明石奈津子(NMB48)、白雪希明(SKE48)、矢作萌夏 (AKB48)が挑んだ。結果、「No,Thank You!」で会場をライブハウスのように盛り上げた岡田、そしてフレッシュでありながらも安定した歌声で「変わらないもの」を聴かせたスーパールーキー・矢作がファイナルに。
最後の第4組は、豊永阿紀(HKT48)、野島樺乃(SKE48)、歌田初夏(AKB48)、山内鈴蘭(SKE48)、立仙愛理(AKB48)の5人。個性派揃いの組だったが、ミュージカル楽曲の「パート・オブ・ユア・ワールド」(リトル・マーメイド)でより個性を際立たせた野島、「誰より好きなのに」を感情たっぷりに歌いあげた山内が選出された。
8人で競われたファイナルでは、緊張やプレッシャーの中、それぞれがベストを尽くし、見ているこちらも思わず力が入ってしまうほど熱い気持ちが伝わってきた。審査員の井上が「さっき(1曲目)は5点差とか6点差とかあったんですけど、(ファイナルは)1点2点の争いで、あとは好き嫌いになっている」と話していたが、どの審査員も点数をつけるのに苦労していたようだ。
発表されるのは上位3名。まず第3位で名前が呼ばれたのは「Aitai」を歌った岡田奈々。その結果に対して「素直に言うと、めちゃめちゃホッとしています。思い描いていた100%全てが出せたわけではなかったので、ここで3位という数字をいただけたことで、『もっと完成形をみなさんに見ていただけるんじゃないか』と思いましたし、まだまだ自分の実力の無さをちゃんと実感できる数字だなと思うので、より高みを目指して頑張ります!多分ファンの皆さんは『悔しい』って言ってくださると思うんですよ。でも、その悔しい気持ちをバネにして、もっともっと輝けるように一緒に頑張っていこうと思います」と前向きな気持ちを表現した。予選1位のプレッシャーやコンディションを含め、万全ではないということだったが、その状態での第3位はさすがと言える。
岡田の名前が呼ばれたことで、誰が優勝するのかますます予想が難しくなっていったが、第2位で名前を呼ばれたのは矢作萌夏だった。グループ別の争いでも同組の岡田よりも高い得点を獲得し、そしてファイナルでも岡田より上位にランクイン。「すごく重いです。嬉しいんですけど、私にはすごく重いです。うれしい気持ちは大きくペンライトを振って応援してくださってるファンのみなさんに伝えたいんですけど、今伝えられていることが幸せです。この2位はファンのみなさんからいただいたと言っても過言ではないと思っています」と素直に喜びを伝えた。昨年12月に正規メンバーにスピード昇格し、この決勝大会の5日後、1月16日には初のソロコンサートを成功させた矢作。新世代を担う規格外のスーパールーキーは"歌唱力"という実力でたくさんの視聴者にしっかりとアピールしてみせた。先日発表されたAKB48のニューシングル(3月13日発売)では初選抜入りを果たすなど、その勢いはまだまだ加速しそうだ。
そんな実力者たちをおさえて初代女王に輝いたのは野島樺乃。Rihwaのバラード「春風」を伸びやかな歌声で聴かせ、予選8位からの逆転優勝となった。「2位で呼ばれなかった時点でもうダメだと思っていました。今、生きた心地がしていません。今日こうして多くのファンの方がペンライトを振って見にきてくださったので、ファンのみなさんと練習に付き合ってくれたお父さんとお母さんにこのうれしい気持ちを伝えたいですね。歌とは、私が全てをさらけ出せるものです。習い事が全然続かなかったんですけど、歌だけは5年以上続けてきていたので、今日、このようなトロフィーを持てることが本当にうれしいです。ありがとうございました!」と喜びを爆発させていた。
最後は野島がセンターに立ち、出演したメンバー全員で「365日の紙飛行機」を歌唱し、イベントは終了した。また、ファイナルまで勝ち残った8人と、予選2位ながらスケジュールの都合で決勝大会を辞退した小田えりな(AKB48)を加えた9人で、3月25日(月)に豊洲PITで「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVE」が開催されることも決定している。
野島は、イベント終了後の囲み取材で「私はこうして大きなステージでひとりで歌うのが夢だったので、今日、この決勝のステージに来られたこともすごくうれしいですし、何より、夢の夢だと思っていたトロフィーを持つことができてうれしいです」と心境を語った。ファイナルでは8人中8番目、大トリで登場。「心臓がはち切れるかと思いましたが、『もうひとり、後で歌う人がいるんだ。自分はラストじゃない』と自分に言い聞かせてステージに出ていきました」と、ラストであるプレッシャーを少しでも軽減させようとしていたようだ。優勝者に贈られる秋元康プロデュースのソロ曲については「ファイナルで歌った『春風』のようにラストにかけて盛り上がりがある曲がいいなって思いますけど、いただけるだけで本当にありがたいので、どんな曲でもいいです」と語り、第2回が開催されたら2連覇に挑戦したいと意欲を見せていた。
このイベントの模様はTBSチャンネル1で生中継されたが、2月23日(土)の13時から舞台裏密着映像などを追加した完全版が放送される。出場者全員が全力で歌と向き合ったこのイベントを改めて見てみてほしい。
文=田中隆信
放送情報
AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 完全版~激闘の舞台裏ドキュメントも初公開SP!~
放送日時:2019年2月23日(土)13:00~
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合がございます。
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