斉藤和義、『PINEAPPLE』を引っ提げて開催された全35公演のライブツアーで魅せた変幻自在のパフォーマンス

今年、デビュー30周年を迎えた斉藤和義は、アニバーサリー・イヤーともあって、例年以上に勢力的な音楽活動を行なっている。4月12日には、通算22枚目となるオリジナル・アルバム『PINEAPPLE』を発表し、新作を引っ提げてのお披露目ツアー『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2023 PINEAPPLE EXPRESS〜明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ〜』が、4月29日の千葉・市川市文化会館を皮切りに、7月30日の愛媛・松山市民会館まで全35公演、3ヶ月に渡って行われた。その31本目となる7月22日、川口総合文化センターリリア・メインホールでの公演をレポートする。なお、この日のライブはWOWOWプラスにて8月27日(日)21時から独占放送されることが決定している。

ステージの上でギターを演奏する斉藤和義
ステージの上でギターを演奏する斉藤和義

3階までぎっしり満員の会場に開演のアナウンスが流れると、観客は早くも総立ちとなり、大きな拍手と歓声で斉藤を迎え入れる。暗転したステージに、バンドメンバーと一緒にゾロゾロと入ってきた斉藤の姿は、いつもと変わらぬ自然体。オープニングの「砂漠に赤い花」が始まると、真っ赤なライトに照らされた斉藤は、アコギを抱え、ブルー地の柄シャツに黒デニムといったシンプルなスタイル。背景の紗幕にはニューヨークの倉庫街のような風景が映し出されている。2曲目でエレキに持ち替え、4曲目までをノンストップで歌い上げると、最初のMCだ。

「イエーイ」と軽く脱力気味のコールに続き、「関東(の公演)は今日が最後です。必要以上に盛り上がっていますが(笑)最後まで楽しませてもらいます」と彼らしい挨拶でスタートした。客席からは斉藤の愛称である「せっちゃん」コールが飛び交い、早くも会場はヒートアップ。

斉藤和義といえば、そのギター・テクニックに憧れるファンも多いことはご存知の通り。この日も冒頭から絶品のギター・プレイを展開、激しいギター・ソロも繰り広げ、観客を煽り、最後は会場にピックを放り投げるパフォーマンスを見せた。バックを担う演奏陣も、お馴染みの4ピース・バンドが、タイトだが力強い演奏でボトムを支える。

二度目のMCではバンドメンバーであるギター真壁陽平、キーボード松本ジュン、ドラム河村吉宏、ベース山口寛雄を順番に紹介。ギターの真壁は腰にかけた鉄のレバーをギターの2弦と連動させることで、ペダルスティールのような音色を出し、古い楽器好きだというキーボードの松本は70年代に流行したクラビネットの響きを聴かせ、ドラムの河村はダブルのバスドラを、ベースの山口はスラップベースを披露するなど、それぞれの個性とサウンド面の多彩さを際立たせるメンバー紹介となった。ちなみにこの公演の翌週には、斉藤の30周年記念アルバム『ROCK`N ROLL Recording Session at Victor Studio 301』の発売が控えていた。これまでにリリースしてきた22枚のアルバムから12曲を厳選し、このステージ上に立つメンバーと共に、ライブ感覚の一発録りレコーディングを敢行したアルバムで、ライブを大切にする斉藤ならではの企画盤である。

中盤以降も、ニューアルバム『PINEAPPLE』からの曲をメインにコンサートは進行していく。途中、バックの映像が変わり、『PINEAPPLE EXPRESS』のタイトルに相応しく、ステージ中央から大陸横断鉄道のような列車が現れる。

シンプルでストレートなロックンロールを得意とする斉藤だが、この日演奏された楽曲は、モータウン調からレゲエ、カントリー・タッチなどサウンド面は多彩で、ブルースハープを演奏したかと思いきや、キレキレのカッティングを聴かせたりと変幻自在のパフォーマンスで1曲ごとに観客を興奮と感動の渦に巻き込んでいく。コロナ禍が明けてツアー・メンバーとの一体感はより濃縮されたものとなり、以前にも増して鋭くエッジの効いたギター・プレイとなっているようだ。

本編最後は今回のツアーを象徴する1曲「明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ」。歌詞中の「この街に」を「川口に」と歌い変えての、迫真のヴォーカルに観客もヒートアップ。歌詞の通り「アレは歌ってくれるかな」「きっとなんもかんも忘れさせてくれる」と期待に胸膨らませたファンとアーティスト、バンドがこの瞬間を共有する一体感が会場を支配し、最高潮のテンションで本編の幕が降りた。

アンコールは畢生の名曲「やさしくなりたい」でスタート。すべてのセットリストが終了し、斉藤は客席に向かっていくつもギター・ピックを放り投げ、感謝の気持ちを伝えた。

8月25日(金)にはデビュー30周年を迎える斉藤和義。休む間もなく8月24日の名古屋国際会議場 センチュリーホールを皮切りに、『KAZUYOSHI SAITO 30th Anniversary Live 1993-2023 30<31 〜これからもヨロチクビーム〜』が全10公演開催される。円熟の域に達するキャリアでありながら、まだまだ尖り続けるロック・アーティストとして輝く斉藤の姿を、ぜひ確認してほしい。

文=馬飼野元宏

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放送・配信情報

斉藤和義 LIVE TOUR 2023 “PINEAPPLE EXPRESS”~明日大好きなロックンロールバンドがこの街にやってくるんだ~
放送日時:2023年8月27日(日) 21:00~
チャンネル名:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽

配信日時:2023年8月27日(日) 21:00~ ※見逃し配信あり
配信プラットフォーム:スカパー!番組配信
※スカパー!放送サービスで、WOWOWプラスをご契約の方のみ視聴可能

※放送スケジュールは変更となる場合があります

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