昨年、世界中を熱狂の渦に巻き込んだ『トップガン マーヴェリック』(2022年)で、稀代のスーパースターであると改めて知らしめたトム・クルーズ。カッコ良さ、カリスマ、そしていまだヤンチャが似合う風情を併せ纏い、唯一無二の存在感を見せつけた。
例に漏れずスタントなしで戦闘機に乗ったことから、ついアクションに目が行きがちだが、トムのスゴさはアクションだけではない。言うまでもなく、それ以前に演技力、そして+αとしての特別感や主人公感があってこそ。世界中が待ち望むスパイアクションシリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023年)の公開直前の今こそ、あえて「アクションだけじゃないよ、トム・クルーズ!」の魅力をおさらいしたい。
■錚々たるレジェンドを相手に、その魅力を引き出す演技派としての幅の広さ
まずは、もうすぐトムの誕生日(7月3日に奇跡の61歳に!)を祝し、独立記念日に生まれた男に扮した『7月4日に生まれて』(1989年)から。戦地で心と体に深い傷を負い、下半身不随となってベトナムから帰還した青年が、激しい葛藤や苦悩の末にやがて反戦運動に身を投じていく―。約1年にわたって車椅子生活を送る渾身の役作りで見事、初のアカデミー賞主演男優賞ノミネートを決めた。ちなみにゴールデン・グローブ賞では主演男優賞を受賞した。
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一概に演技力≒賞とは言えないが、そこからフィルモグラフィを眺めてみると、トムが賞レースに初登場したのは、なんとデビュー2年目。『卒業白書』(1983年)でゴールデン・グローブ賞主演男優賞に初ノミネートと、早くから高く評価されていたことに驚く。当時21歳(撮影時は20歳!?)のトムが演じたのは、性への興味で頭がパンパンの高校3年生。Yシャツに白ブリーフ姿で歌い踊る姿は、今も語り継がれる伝説のシーンだ。その2年後には、『トップガン』『ハスラー2』(共に1986年)で大ブレイクし、「ブラット・パック」と呼ばれた若手俳優集団から、余裕で頭一つ抜け出した。
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以後、賞とは無縁のスターと囁かれもしたが、大物俳優とのコンビネーションの上手さと彼らの演技を軽やかに受ける巧みさは、もっと高く評価されるべきだろう。『ハスラー2』では、トム扮する若造と、ポール・ニューマン演じるかつての腕利きビリヤードプレイヤーが、師弟関係からライバルとなり、最終ゲームでぶつかり合う。師弟愛をはじめいろいろな感情の綾、視線の交差から目が離せない!本作でニューマンは、念願のアカデミー賞主演男優賞を手にした。
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また、『レインマン』(1988年)では、名優ダスティン・ホフマンと豪華共演。遺産目当てでサヴァン症候群の兄に近づくトム演じる利己的な弟が、やがて兄弟愛を取り戻していく爽快かつ感動的なロードムービーだ。ガッツリ役に入り込むホフマンに対し、兄に振り回されそれを受ける軽重自在のトムの演技と爽やかな笑顔は、軽やかな感動と笑いを生み、兄弟の絆にキュンキュンさせてくれる。ここではホフマンが2度目のアカデミー賞主演男優賞を受賞。トムにとっては損な役回りにも見えるが、作品賞を含む4部門受賞の立役者であることに異論はあるまい。
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さらに、『ア・フュー・グッドメン』(1992年)では、怪優ジャック・ニコルソンと対峙。まさに怪演と言うべき怖過ぎる軍人ニコルソンのド迫力演技に対し、トムの青二才的かつ新世代らしい海軍エリート弁護士の軽やかなトーンが絶妙なバランス。ラストの法廷シーンは胸がすく!本作でもニコルソンは、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
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