Kゾンビブームの火付け役！コン・ユ、ゾンビパニックにドラマ性をもたらす感情表現

時代劇とゾンビパニックを組み合わせた「キングダム」(2019年)をはじめ、個性豊かなアイデアを落としこんだユニークな作風で世界的な注目を集めている韓国のゾンビコンテンツ。"Kゾンビ"と呼ばれるブームの火付け役となった作品が、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)だ。

カンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニングに招待された本作。156ヶ国から買い付けオファーが殺到し、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)のジェームズ・ガン監督や『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)のギレルモ・デル・トロ監督といったビッグネームたちからも絶賛された。また、映画批評サイト「ロッテン・トマト」でも高評価を獲得するなど、世界的に映画ファンから支持されたのだ。

この評価に加えて、興行面でも当時の韓国映画史上歴代最高のオープニング記録を達成。累計では1000万人超えという快挙となった。韓国で初めてゾンビウイルスを扱った商業映画として、記録にも、記憶にも残る作品として根強い人気を誇り、2020年には続編となる『新感染半島 ファイナル・ステージ』も製作された。

ジャンル映画でありながら、ここまで大きな反響を獲得できた最大の要因は、作品内にしっかりとした人間ドラマが盛り込まれていたからだろう。物語は、仕事ばかりで家庭を顧みず妻とは別居している主人公・ソグが、娘の「母に会いたい」という誕生日の願いを聞き、高速鉄道で釜山に向かう道中にゾンビパニックに遭遇してしまう...というもの。電車内という限られたシチュエーションでのスリルや、暗くなるとゾンビが動きを止めるといったユニークな設定もさることながら、未曾有の危機に陥り、剥き出しになる人間の本性を丁寧に描き出している。

ソグを演じているのは韓国随一の人気俳優と言っても差し支えないコン・ユ。出世作「コーヒープリンス1号店」(2007年)や「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」(2016年)など、ロマンスでの甘い印象が強く、ゾンビパニックとマッチしなそうなコン・ユだが、これまで培ってきた演技力の高さを存分に発揮し、物語に深みを持たせている。

というのも、ソグはファンドマネージャーという職業柄か、即物的な考え方の持ち主で、パニックが起きると自分と娘だけ助かろうと自己中心的な行動をする。しかし、粗暴だが妻や周囲の人々のために体を張って戦うサンファ(マ・ドンソク)など、様々な人々と出会うことで次第に心が動かされていく。

コン・ユは人間的なソグの心の動きを巧みに表現している。物語の前半は子どもを蔑ろにしてまで仕事の電話をかけるなど、どこか冷たさを感じさせる眼差しや口ぶりだったが、危機を経て、優しさと覚悟が同居したような顔つきに変化。また、なりふり構わずにゾンビに立ち向かっていくアクションでは、超人的な強さはないが、ここぞという時の人間の根性を感じさせるような泥臭い姿で正義感を体現した。スマートな印象が強いコン・ユだからこそ、この新たな一面が人間ドラマにより奥行きをもたらしている。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』は7月10日(土)にスターチャンネル1にて放送される。子どもを守るために奮闘し、父としての自覚、そして人間としての尊厳を取り戻していく男を感情豊かに浮かび上がらせたコン・ユの演技は必見。物語の終盤で見せるある表情には思わず泣かされてしまうことだろう。

文＝HOMINIS編集部

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