1997年のドラマ「モデル」でデビューして以来、幅広く活躍を続ける韓国の名優チャン・ヒョク。近年はバラエティ番組にも相次いで出演し、自然体で気さくな素顔を覗かせている一方で、最新時代劇「最愛の敵~王たる宿命~」(2022年)では、王朝の実質的な権力を握る左議政役を熱演。主演のイ・ジュンと息詰まる政治対決を展開し、"時代劇のカリスマ"として堂々たる演技を披露している。
ヒョクのカリスマたる実績は数多く存在する。"奴婢(奴隷)"を追う推奴師を演じたアクション時代劇「チュノ~推奴~」(2010年)は、瞬間最高視聴率41.9%、平均視聴率32%を記録し、「韓国時代劇の歴史を変えた」と言われるほど。その後もハングル誕生をめぐるミステリー超大作「根の深い木 -世宗大王の誓い-」(2011年)や、天涯孤独の男が朝鮮一の商売人を目指すサクセスストーリー「客主~商売の神~」(2015年)など、様々な時代劇に出演。異なるキャラクターをリアルに体現し、人々を魅了してきた。
7月14日(木)にムービープラスで放送されるソード・アクション映画『剣客』(2020年)もその一つ。17世紀、明と清が大陸の覇権をめぐって争い、朝鮮半島にもその影響が及んでいた。宮廷では生き残りをかけた対立が激化。そんな中、かつて国王の懐刀として"最強の武人"とも謳われた剣客・テユルは、愛娘・テオクと山奥で静かに暮らしていた。
ある日、古傷により視力が蝕まれていくことを心配するテオクに強引に都へ連れ出される。しかし、都では大陸からの使者である清の皇族らが横暴の限りを尽くしており、テオクが連れ去られてしまう。静かに暮らしたいと願い、その刃を封印していたテユルだったが、愛する者を守るため再び剣を抜く...。
朝鮮最強の剣客・テユルを演じたヒョク。ジークンドーの達人としても知られる彼がアクションチームと殺陣のコンセプトを決め、ノースタントで高難度の超絶アクションを披露した。"ソード・アクション"の謳い文句通り、火花散る圧巻の剣戟が繰り広げられる。ヒョクの鍛え上げられた肉体から放たれる剣捌き、研ぎ澄まされた眼光の鋭さが、これまでの歴戦を物語っている。所作に全く無駄がなく、言葉の一つ一つが静かで重い。ボロを纏い、長髪に無精髭でやつれた風体をしていても、痺れるくらいにかっこいい。
大勢の銃兵を斬って斬って斬りまくるシーンや武人同士の1対1の戦いも、緩急ある剣技が次々に展開し、圧倒されてしまう。また、激しいアクションだけでなく、少しずつ視力が衰え見えなくなっていく様子や愛娘への愛情も細やかに表現。本作でもヒョクのカリスマたる所以が見られるはずだ。
5月27日からは、演技派ユ・オソンと共に熱い男の生き様を演じ切った犯罪アクション映画『狼たちの墓標』が日本公開を迎えたヒョク。時代劇で見せる重量級の存在感はそのままに、目的のためなら手段を選ばない新興組織のボスという非情なキャラクターを鮮烈に体現している。年齢を重ねるごとに凄みを増す――その圧倒的な存在感に改めて注目しながら、今後のキャリアにも期待していきたい。
文=中川菜都美
放送情報
剣客
放送日時:2022年7月14日(木)21:00~
チャンネル:ムービープラス
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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